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噂な旅通信

怪談師・Cocoさんが案内する京都で、一番怖いのは「お化けじゃない」らしい

沢田眉香子
編集・著述業

噂の広まり

独り言

京都のプロや旅のプロに、街の噂や旅の好奇心をくすぐるお話を聞く連載「噂な旅通信」。今回お話を伺ったのは、京都を拠点に怪談師として活動を行う Coco(ここ)さんです。

イベントやYouTubeなどの動画配信サイトで怖い話が人気の昨今、おっとりした京都弁の語りで、異彩を放つCocoさんは、お化け屋敷やホラーカフェもプロデュースする怪談界のニュースター。
マニアだけのものでない「怖く、楽しく」という怪談を目指すCocoさんが「怪談目線」で案内すると、京都の知られざる魅力が見えてきました。

Q1 まずはじめに怪談師とは、どんなお仕事なのでしょうか?

お客さんを集めて怪談を話す、いわゆる「怪談イベント」の主催がメインですね。そのほかには、別の怪談師さんが主催するイベントへの出演、メディアへの出演もありますし、最近では、よく怪談本の執筆をさせていただいていて。コロナ禍をきっかけに、配信にも力を入れています。

書影
竹書房怪談文庫から2022年に出版された『京都怪談 猿の聲(こえ)』。京都を舞台にした怪談話を集めた一冊で、Cocoさん執筆の「京都御所の怪異」などが収録

Q2 怪談師になられたきっかけは?

小学校の時に『地獄先生ぬ~べ~』(テレビ朝日系列)とか『怪談レストラン』(テレビ朝日系列)、『ゲゲゲの鬼太郎』(フジテレビ)をテレビで観ていて、ホラーが面白いなって思うようになりました。2019年に怪談の賞レース「怪談最恐戦」っていうのがありまして。その予選を通過しまして、そこで初めて人前で怪談を話したんです。これが、怪談師としてのデビューでしたね。その後は、怪談イベントを主催して、また他のイベントから呼ばれてっていう形で、怪談師として活動をはじめました。

 

Cocoさんの怪談はイベントのほか、YouTubeで配信中。ホラー映画などに比べ、聞く人の想像に委ねる部分が多い怪談は、身近な場所を思い起こさせるので、よりリアルでゾッとするらしい……

Q3 お化け屋敷の監修や、ホラー喫茶のプロデュースなど。怪談やホラーの魅力をマニア以外にも伝える活動もしておられますね?

京都の新京極にあった怪談専門店「京都怪談商店」に併設する形で、お化け屋敷「京都怨霊館」の監修と、ホラー喫茶「シェフのいないレストラン」(いずれも現在は閉業、移転準備中)をプロデュースしました。地下の洞窟の中の部屋に、和風ホラーの部屋、洋風ホラーの部屋、殺人鬼の部屋、とそれぞれテーマを設けて、マニアだけではなく、できるだけ一般の方にも楽しんでもらえる形でって考えましたね。「お化けは怖い」という人でも、カフェだったら入っていただける。若い人なら、写真映えで、楽しんでももらえるし。

料理もおしゃれなカフェ風にして、パンケーキとかを、料金も安めで設定しました。隣のお化け屋敷から悲鳴が聞こえるのを聞きながら、優越感に浸りながらスイーツを、みたいな(笑)。お化け屋敷の帰りの人だけでなく、このホラーカフェをメインに来てくれる人たちもいて、嬉しかったですね。

ホラーカフェ内装ホラーカフェ_メニュー
怪談やホラーといったジャンルに対して、怖いものが苦手な人でも楽しめるよう、間口を広くしたいというCocoさん

Q4 「怪談の買い取り」もされているとか?

怪談専門店「京都怪談商店」では、一般の方の怖い話を「買い取」って、自分の怪談に使わせていただいていたんです。こういうことをする怪談師さんって珍しく、大体は「足で稼ぐ」ようなところもあって、自力で取材される方が多いんです。でも、一般の人で怖いことを体験したけど、人に話せずにいる人も意外に多い。「聞いてくれるんやったら、ちょっと行ってみようかな」って、来てくれる方は多かったですよ。やっぱりみなさん「聞いてほしい」みたいで(笑)。

買取価格は、話の長さだったり、脚色のしやすさだったりを考慮して100円か200円なんですけど。価格というよりも、自分の怖い話がどんな怪談になるのかに興味があるっていう人も多いですね。

Q5 買い取った怖い話を、どうやって「怪談」として語るのでしょうか?

聞かせていただいた怖い話は、個人名や地名などが入っているため、まるっきりそのままでは怪談にできないんです。基本的には、話の大筋はそのままですが、お話に関係する方のプライバシーへの配慮として、まずは話の出どころがばれないように変えます。

そもそも怪談には、普通の怪談と創作を入れない「実話怪談」というジャンルがありまして、どちらで話すのかにもよりますが、実話であれば大きな脚色はせずに出来る限りそのままでお話ししています。
ただ、体験した本人でないと分からないような細かい描写や擬音などはリアリティが増すよう、想像の中で脚色したりするんです。それに実話はどうしてもオチが弱くなってしまう傾向があるので、起こった怪異に対する自分の推測や考えなどを入れることで強度を上げたりしています。

Q6 ひとつの作品を作り上げていくような感じですね。

リアリティに欠けているならリアリティを出しますし、オチが弱いと思うならオチを分かりやすく怖い方へ変える。披露する場にもよりますが、いつも出来る限り意外性のあるオチや想像を裏切るような話にしようと心がけて作っています。

私の場合、テレビや映像系は「ガッツリとオチがある方がいい」と言われますし、怪談イベントでは、客層に合わせますね。
たとえば、ファミリー層が多ければ、グロテスクな話はNG。分かりやすくシンプルな怖い話をするようにしています。
ホラーマニア向けには、リアリティのある実話怪談で「あれは何だったのか?」と考えさせるような不可解なお話を選んでいます。ちょっとえげつない要素がある方が楽しんでもらえますね。
「怖く、楽しく」、そうやって話を提供してくれた人にも観客にも気をつけています。

Cocoさん
怪談は話そのものはもちろん、その場の雰囲気や表情、話し方など、あらゆる要素を総合して、ゾッとする感覚を演出する、エンターテイメントに近い要素があると話すCocoさん

Q7 京都出身のCocoさんが考える、ザ・京都な怪談とは?

やっぱり私、「和」が好きなんですよ、その影響で、お化け屋敷も和のテイストを入れたりしていました。怪談師としてのコスチュームも、白と赤の服を着ることが多くて。白は死装束、赤は生き装束って言われてまして、怪談って死と生、両方とも扱う話なので、そのコンセプトも反映させているんです。

何にせよ京都は、オカルト、ホラー要素と切って離せないですよね。古い怪談がたくさんありますし、人が死んだ事故物件って「出る」と言われますが、そもそも京都って古い街だから、どこでも人が死んでる。だから、「どこでも出る」わけですから(笑)。

Q8 京都の、最強怪談・心霊スポットを教えてください。

心霊スポットは……基本あんまり私、おすすめしないんですよ(笑)。 
ただ、心霊や怪談系で京都最強と言われているのが、西京区大枝にある首塚大明神(くびづかだいみょうじん)。酒呑童子(しゅてんどうじ)って呼ばれる鬼の首を京都の中心に持ち込もうとしたら、首塚大明神のある老ノ坂(おいのさか)峠で動かなくなったと言われています。近くにモーテル・サンリバーと、老ノ坂トンネルっていう心霊トンネルがあって、一帯がミステリースポットと言われています。
あと、深泥池は「タクシー怪談」の発祥の地と言われています。「お客さんつきましたよ」と振り向いたら、乗せたはずの客がいなくなってて、席がビチョビチョに濡れてる……というアレです。

Q9 京都で、ホラー観光案内をするとしたら?

京都の観光とオカルトスポット、両方回れるコースをご案内しましょう。

まず、昼コースは清水寺からスタート。「清水の舞台から飛び降りる」って言いますけど、聞くところでは、飛び降りたところで普通は死なないそうです。でも昔は、打ちどころが悪くて、そのまま亡くなった方もおられるので、「そういう噂」はあるんです。
そして、松原通大和大路にある幽霊 子育飴のお店「みなとや」へ。幼子を残して亡くなった母が、夜な夜なこの飴を買いに来て、子供に与えて育てたという伝説があります。

幽霊子育飴
幽霊 子育飴は、500年以上続く歴史ある飴

この近くに六道珍皇寺っていうお寺があるんです。六道が地獄の入り口って言われていまして、地獄につながると言われる井戸があります。
そして、そこから歩いて10分くらいでしょうか、安井金比羅宮があります。縁切りで有名な神社ですが、願いを書かれた絵馬の中に……怖いものがあるんです。「夫と親友の〇〇が不倫している、別れさせてほしい」とか……人の怨念ってやはり怖いですね。

安井金比羅宮
「縁切り神社」の別称で知られる、安井金比羅宮

それから足を延ばして三条河原へ。ここはもとは処刑場なので石川五右衛門、石田三成、近藤勇も処刑されているんですが……。そんな場所にも関わらず、カップルが等間隔に座ってる(笑)。

Q10 京都を知らずに観光するって、怖いですね(笑)。夜のおすすめはどうでしょう?

夜は、伏見稲荷がおすすめです。ここ、夜入れるのって、ご存じです?鳥居がライトアップされてるのですごい幻想的で。さらに本殿から稲荷山を少し登ったところに小さい池があって、探し人がいる時に、そこで手を叩くんですよ。響いた方向に手がかりがあるっていう、不思議な言い伝えがあるんです。

伏見稲荷神社
伏見稲荷神社は、拝観が自由のため夜でも参拝が可能

貴船神社も夜のライトアップがきれいですが、ここで呪いの五寸釘を打っていた伝説があったと思うと……。

Q11 京都では、お化けより人間の方が怖いってふうにも、思えます(笑)。Cocoさん自身が、恐怖体験に巻き込まれたことは?

旧東山トンネルの歩道と、それをずっと上がったところにある将軍塚は、「出る」って言われています。近くに、粟田口刑場跡があるんですけど、ここではかつて1万5000人ぐらいが処刑されたと言われています。そして、この近くの厨子奥(ずしおく)トンネル。住宅街の中にある、いわゆる高架下のトンネルなんですけど、出入り口にお墓と無縁墓地があるんです。

私、夜中にここに白いコートを着てひとりで配信しに行ってたら、走ってきた自転車のお兄さんが私を見て「うわーっ!」て、悲鳴をあげていました。
むやみやたらに、白い服で心霊スポットにひとりで行くものではないですね(笑)。

 

 

京都府内での新しいお化け屋敷のプロデュースや出版のほか、怪談やホラーをテーマにしたVR体験も準備中というCocoさん。京都×怪談の新たな発信に目が離せません。

 

<プロフィール>
Coco(ここ)
怪談師/ホラープランナー。怪談師としてイベントへの出演や書籍の出版を行うほか、お化け屋敷のプロデュースやホラーカフェの開業、怪談話の買い取りなど幅広い活動を行う。SNSでの発信も盛んで、TikTokのフォロワー数は21万人、SNSの総フォロワー数は30万人を超える。根っからのホラー・オカルト好きで、ネタ集めのため、自ら事故物件に住んでいるというストイックさ……!
共著に『京都怪談 猿の聲』(2022年 竹書房怪談文庫)。2023年1月12日(木)には、共著の『関西の怖い街: 京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の怖い話』(2023年 興陽館)が発売予定。

お化け屋敷制作 京都オカルト商会 HP:https://occult666love.wixsite.com/occultravel

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企画編集:光川貴浩、河井冬穂、早志祐美(合同会社バンクトゥ)
写真提供(敬称略):Coco、photoAC

 

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