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【SHOW-GOさんインタビュー】「ヒューマンビートボックスの天才」が、京都に引っ越してきたらしい

KenTa
ラッパー・ビートボクサー

噂の広まり

井戸端会議

口や鼻からの発声だけで音楽を奏でる「ヒューマンビートボックス」。その知名度が今、急上昇している。「ボイパ(ボイスパーカッション、ボーカルパーカッション)」と混同されることも多いが、ルーツは完全に別もの。アカペラ文化に紐づくボイパに対して、ビートボックスはヒップホップ文化から生まれたとされる音楽表現だ。日本では長らくマイナーな存在だったが、YouTubeなどを入り口にファンを続々と増やしているらしい。

SHOW-GOさんは間違いなく、現在のシーンにおける主役のひとりだ。北海道出身の22歳。トヨタやAmazon Musicなど数々のCMに起用され、メディアに出演すれば「天才」「革命児」の言葉とともに紹介される。そんな彼が昨年9月、京都に引っ越してきたらしい。

過去には『A LOVESONG FOR KYOTO』という作品を制作したこともあるほど、筋金入りの京都好きであるSHOW-GOさん。

 

念願かなっての京都暮らし。近況を聞かせてほしいと取材をお願いしたところ、「私でよければぜひ」と快諾してくれた。最近の生活について、そしてビートボックスについて。その才能に注目が集まる“天才”に、等身大の気持ちを聞いてみた。

きっかけは修学旅行。北海道生まれの彼が京都に抱く愛情

取材当日、河原町の喫茶店「ジラフ」に来てくれたSHOW-GOさん。「人混みが苦手で」との言葉通り、普段、繁華街に足を運ぶことはあまりないものの、ジラフはお友達にすすめられて気になっていたお店とのこと。プリンを注文し、さっそく取材スタート。まずは京都での暮らしぶりについて聞いてみた。

SHOW-GOさんは北海道出身。この街を好きになったきっかけは、高校時代の修学旅行にさかのぼる。

「修学旅行って、普通は遊びと勉強が半分ずつくらいの感覚ですよね。でも僕には友達がいなかったので、4泊5日、京都の歴史ついてしっかり学びまして。そこからのめり込んでいきました」

以来、年に2〜3回の頻度で京都を訪れるように。北海道からの道程は楽ではないものの、「何度も来るうちに慣れましたね」と笑う。訪問を重ねるうちに京都に知り合いも増え、「気づいたら住んでいた」とのこと。京都の好きなところを聞いてみると「たくさんありますが、街と山が近いところもそのひとつ」との答えが。

「元々、山をぶらぶらしたりするのが好きで、京都に通いはじめたころは嵐山の奥の清滝に行ったりしてたんです。街自体がちっちゃいのも、ひとりに優しくてありがたいですね」

そんな京都での生活は、とにかく「整っている」とのこと。

「朝型になりましたね。6時に起きて22時に寝るような生活です。京都は朝がいちばん好きかもしれない。早朝のお寺の空気とか、最高なんですよ。朝の散歩の途中でお寺で湧水をもらって、帰ってからその湧水でコーヒーを入れたりして。生活のリズムに自然と京都が入ってきている感じ」


休日は蚤の市に出かけるなど、京都暮らしがすっかり板についている

「ビートボックスをがんばっている感覚はない」。「ギラギラ時代」を経てたどり着いた自然体

ビートボクサーとひとくくりに言っても、活動の方向性はさまざま。バトルやショーケース、音楽作品に映像作品と、表現形態が広い分、進化の方向性も多種多様になる。あえて区分するのであれば、バトルより制作に力を入れるSHOW-GOさんは「作品勢」と言えるかもしれない。YouTubeにアップするMVは、収録から撮影、編集まですべて自身の手によるもの。

「ビートボックスをするのも、動画撮って編集するのも、ミックスマスタリングするのも全部好き。友達もいないしお金もない、誰にも頼めないからやるかって感じで高校生ぐらいからはじめて、気づいたらできるようになっていましたね。自分でやるしかなかったから無我夢中でできたのかなと思います」

愛する土地への移住を叶えた今、ビートボックスにもいっそうストイックに打ち込んでいるだろう……と思いきや、意外にも肩の力は抜けている様子。

「『出てきたからには作っとくか』みたいな感覚です。出てこなかったら作らなくていい。最近は暑いからサボり気味です(笑)それくらいのゆるさでやっていきたい」

「バトルに出たいという気持ちは?」との問いにも「バトルは今はいいかな」とアッサリ。そんなSHOW-GOさんだが、かつては野心に燃えていた時期もあったと振り返る。

「中3でビートボックスをはじめて、最初にバトルに出たのは高校3年生でした。それまでSNSでつながるしかなかったのが、大会に出るとビートボックスをしてる人と直接顔を合わせられて、それがうれしかった。しばらくはバトルにハマっていましたね。作品についても、一時期は大学に通いながら夜中に録ったりしていたので、焦りというか、反骨精神が現れていると感じます」

出場するバトルの規模は、やがて北海道を飛び出し、全国、アジア、そして世界へと躍進していった。そんな「ギラギラ時代」においても、バトルそのものは好きではなかったのかもしれないと、SHOW-GOさんは回想する。

「世界大会に出た時、『ここまで来たか』という感じはありました。でも、僕はメンタルがあんまり強くないので、大きな舞台に対しては『もういいか』となってしまって(笑)。原点回帰したというか、現在の制作メインのスタイルは、中学生のころに戻ったような感じ。人が苦手なので、こっちのほうが性に合ってるんじゃないかな」

とはいえ、「またバトルに出てほしい」と願う声も決して少なくはない。進化したスキルがステージ上で爆発する様を見られるとあれば、どうしたって心ひかれてしまう。ところがSHOW-GOさん自身は、周囲の評価にまったくピンと来ていない様子だ。

「僕、なぜかバトル強いやつみたいな扱いになってるんですけど、全然強くないんですよ。たしかに大会でちょっと目立ちはしましたが、ひとつひとつの成績は大したことない。『SHOW-GOがこのバトル出たら優勝確定』みたいなコメントを見るたびに『いや優勝したことないけどな……』って思って(笑)」

多くの称賛を集める才能がありながら、本人にはギラつきを感じさせる雰囲気がないことは正直、意外に感じられる。中学校から進学校に通い、1日10時間机に向かうなど、昔から「勉強マン」な性格だったというSHOW-GOさん。努力家であることは間違いないが、ビートボックスに対しては、努力とはまた違う感覚をもって向き合っているようだ。

「正直、ビートボックスをがんばったことってないんですよ。決して舐めてるわけではなくて、たとえるならゲームに熱中するような感覚。暇があっておもしろいからのめり込むのであって、『挫折を乗り越えてがんばる!』とかってちょっと違うじゃないですか。うまくいかなくても、単純にゲームオーバーしちゃったからもう一回やるというだけ。だから『すごい努力の賜物ですね』って言われると、ありがたいんですけど違和感はありますね」

スキルを磨くことについても、周囲の注目に反し、本人に気負う様子はない。

「昔は新しい技やサウンドを使ってやろうという意識もあったんですが、今はすべてフラットに、構成音のひとつとしてしかとらえていません。湧いてきたら使うということはありますが、基本的には今のレパートリーでも十分だと考えています。ただ、聴いてくれる人に揺さぶりをかけるのは好きなので、あえてベーシックな曲を出して『あれ?下手になった?』って言わせてから、また技術ゴリゴリの攻撃的なやつを出したり。そういう振り幅で驚いてくれる様子は見ていて楽しいですね」

「ひとりの人間が、マイク一本でやっていることが大事」。環境が変わっても揺らがない軸

SHOW-GOさんにとって、ビートボックスはとことん「好きでやっている」こと。それはファッションや髪型についても同様だ。

SHOW-GOさんのMVを観ると、彼自身のビジュアルを含めた「作品」としての完成度の高さに驚かされる。特に心掴まれるのは、和の要素の効かせ方。「日本人の自分だからこそかっこよく見せられる」と分析はするものの、根底にあるのはあくまで「好き」の感覚だ。

「『ブランディングうまいな』なんて言われることもありますが、『違うよ〜』って(笑)。特に海外ウケを意識しているということもなくて、結局は好きな文化、好きなテイストだからかっこよく見せたいってところに尽きますね」

「喋るのが苦手だから本当はテレビにも極力出たくない。でも身近な人が喜んでくれるから、そのために出ています」と話すSHOW-GOさん。

「幸せのコスパが良いままで生きていたくて。環境が変わって余裕が出ても、質素なものに宿る幸せを忘れないようにしたいです」

周囲の熱狂に呑まれず、”天才”はあくまでもマイペースだ。しかし、地に足をつけた語り口の奥に、「好きな場所で好きなことをする」ことへの誠実な姿勢がのぞく。

「京都に住み続けるかどうかも決めていないんですが、今はこの環境が理想的だと感じています。テレビ出演などに積極的な気持ちはありませんが、ビートボックスを競技者以外の人に聴いてもらえるのはうれしい。だから今は技術へのこだわりというより、純粋にいいなと思う作品を追求したいですね」

芯にあるのは「ビートボックスじゃないと意味がないことをやっていきたい」という思い。

「ビートボックスは楽器の代わりと捉えられることもありますが、それは絵を描いている人に『写真でいいじゃん』って言っているようなもの。ひとりの人間がマイク一本でやっている、それがいちばん大事なことだと思っています」

 

企画編集:光川貴浩、河井冬穂、早志祐美(合同会社バンクトゥ)
撮影(敬称略):牛久保賢二

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