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京都で小商いを営む店主に聞く、お店に眠る“売れ残り商品”には「予想外のお宝がある」らしい

「ポmagazine」編集部
「ポmagazine」編集部

噂の広まり

井戸端会議

ベストセラーや売れ筋商品の影に潜む「売れ残り商品」。売れ残りと言うと聞こえは悪いが、裏を返せばまだ誰もその隠れた魅力に気づいていない“掘り出し物”とも言える。どんなお店にもひとつやふたつはあって、まだ見ぬ運命のお客さんをじっと待ちわびているに違いない。

京都はいわずと知れた「小商い」の街。書店にレコード、雑貨、古道具店など……。店主の個性が際立つ個人店舗が立ち並ぶ。そんな目利きの店主たちが自信をもって仕入れたが、なぜか長い間売れていない掘り出し物を探すべく、ご協力のもと自らその魅力をプレゼンしてもらった。知ればきっと欲しくなる(はず!!)マニアックな掘り出し物と、店主の熱いプレゼンの様子をとくとご覧あれ。

ご協力頂いたお店
01 ホホホ座 浄土寺店(書籍・雑貨店)の場合
02 itou(古道具店)の場合
03 Pauls Boutique Antiques(古着店)の場合
04 100000tアローントコ(レコード・CD・古本店)の場合
05 非実用品店めだか(古道具店)の場合

01 ホホホ座 浄土寺店(書籍・雑貨店)の場合

京都を代表する名書店のひとつ「ホホホ座 浄土寺店」。店主の山下賢二さんが、こちらもまた名書店であった「ガケ書房」を2015年に移転するかたちでオープンした。


「本の多いお土産屋」と称し、店内には書籍や雑貨が所狭しと並ぶ。

ガケ書房の頃から数えると今年で17年目。個性派店舗が揃う浄土寺エリアのランドマーク的存在であり、左京区の顔というイメージも強い山下さんに、お店に長く眠る掘り出し物について聞いてみた。

「見ているけど目が合っていない商品ってありますからね」と店を見渡す山下さん。

 

ー早速ですが、商品の紹介をお願いします。

山下さん:うちに長く眠っていて、絶対知ったら欲しい人がいるだろうなという商品をいくつか選びました。まずはこちら。

名古屋発のストリートカルチャー誌『roots magazine』。ネットでは「名古屋のカルチャーを語る上でこの本のアーカイブの威力は凄まじい」との評価も。

山下さん:ガケ書房のオープンが2004年で、これはその時のオープニング在庫。つまり17年間、お店で一番の古株になります。当時は最新の雑誌でしたが、うちと客層が合っていなかったのか売れず。これ以降は仕入れていないですね。僕もまだ店の方向性が決まっていない頃で、色々模索していました(笑)。

「当時は若手だったけど、今は有名になった方とかいるかもしれないですね」と山下さん。

続いてはこちら。

写真編纂誌『グラフィカ』。山下さん曰く「写真もかっこいいし、紙も印刷もすごくきれいな雑誌」。

山下さん:これは、たしか本職が新聞記者の方だったかな。その方が当時クラウドファンディングとかもないので、有志でお金を集めて創刊した写真雑誌です。創刊号はもう完売したんですけど、なぜかこの2、3号だけ(笑)。ベン・シャーンの特集とか、考現学の今和次郎、藤森照信さんとかね。すごく貴重な資料がいっぱい載っているんですよ。


『あすなひろし作品選集14』。公式サイトによると「当時の掲載誌の紙質や単行本のサイズでは再現できなかったあすなひろしのタッチを、B5版サイズで忠実に再現しました」とのこと。

山下さん:これは、あすなひろしさんという1960〜70年代に活躍した漫画家の作品選集。10年前くらいにこの方のリバイバルブームがあって、作品が文庫でまとまって出たりしていたんです。そんな中、これは研究者の方が出した作品選集で。今はもう新しく印刷していないようなので、本当に貴重なやつだと思うんです。

ネットでもほとんど情報が出てこない、正体不明のお宝雑誌。詳しい方がいれば情報求む。

山下さん:あと、これはいきなりお店に売り込みに来られた漫画なんですけど。すごいのが、まだメジャーデビューする前の漫画家の大橋裕之さんや、ミュージシャンの前野健太さんとかが漫画を描いているんです。おそらくそういう東京のサブカル人脈でつくられたんだろうと思います。

指差す先には、まだ無名だった頃の漫画家・大橋裕之さんの名が。

ーこれはまさにお宝ですね……。

山下さん:でもこれ、表紙に何にも情報が載ってないから、目次をちゃんと確認して、「あっ」て気づかないと、ファンでさえも反応できないというハードルの高さ(笑)。

伝説ともいわれる漫画家・山田花子さんの著書を映画化した作品。

山下さん:最後がこちらです。これも製作会社の方が売り込みに来られて。山田花子さんという漫画家の作品を映画化したDVDです。注目すべきは、デビュー当初の氣志團の綾小路翔さんが出演されているんですよ。これはファンさえ知らないかも。

ーありがとうございます。まさに隠れたお宝だらけでした。

山下さん:だいぶ偏ったお宝ですけどね(笑)。でも今となっては、時代を経ているので、好きな方にとってはめちゃめちゃ価値が上がっているものばかりだと思うんですよ。そういう方が、うわっていう驚きと、お宝と出合えたという喜びを味わってもらえたらと思います。

ホホホ座 浄土寺店
京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1階
営業時間:11:00~19:00
http://hohohoza.com/

02 itou(古道具店)の場合

左京区・一乗寺、大通りを一本入った閑静な住宅街に店を構える古道具屋「itou」。つくり手の個が表れるユニークな造形物をはじめ、店主の伊藤槙吾さんが全国から仕入れた古道具たちが並ぶ。


ものの配置やそこから生まれる空間に関心があったという伊藤さん。もの同士の関係性が生み出す展示空間のようなディスプレイにも注目。

昨年この地に移転し、お店は今年で6年目になる。それぞれ唯一無二の個性を放つ商品の中で、長く眠る掘り出し物とは一体どんなものなのだろうか。

 

ー長い間売れていない掘り出し物、何かありますか。

伊藤さん:長いもので言うとこれかな?

奥の部屋でどっしりと存在感を放っていた一品。

伊藤さん:これは、お店に置いてだいたい1年半くらい。愛知県のリサイクルショップで見つけました。

ーどの辺が気に入っているんですか?

伊藤さん:うちは仕入れの時、用途があるないに関わらず、基本的にオブジェとして仕入れていて。これもピッチャーみたいな形ですけど、そもそもオブジェとして気に入っています。あと、いわゆる作家さんとかではなく誰だか分からない素人の方がつくったものなので、素人ならではの造形や、特に色ですね。販売目的でつくるものには、なかなかない色彩感覚というか。売るという行為が後に想定されていないからこそ出来る、はっちゃけ具合みたいなのが好きです。


何度も塗り重ねられた色にこだわりの強さを感じる。

伊藤さん:お金が絡まないっていうのはひとつ、つくるものが大きく変わってくる要因だと思っています。素人なので、そんなに薄くつくれているわけでもなく。それがまた面白いと思います。

ーお勧めしたい使い方やディスプレイ方法などはありますか。

伊藤さん:もう全然、何もないっすよ(笑)。僕自身、個人的な買い物でもあまり何も想定せずに買って、家に帰ってから考えるタイプで。どこに置くかとかを想定せずに直感的に気に入って買って、家に持ち帰ってから“もの起点”でその空間を組み直すというか、考え直すきっかけにもなるので。予定調和で買わない買い方も大事だと思いますね。

ーお店の仕入れもそういう感覚でしょうか。

伊藤さん:仕入れは完璧に想定ゼロですね。“もの”しか見ていないです。でもそういうある種、半強制的に空間を変えるきっかけになるというのは、すごくいいことなんじゃないかと思っています。

ーお店のディスプレイもそうやって出来ているんですね。

伊藤さん:僕はたぶんディスプレイが先行というか。選ぶ時はもちろん古道具屋として、ものをセレクトするんですけど、持ち帰って店に並べる時は古道具屋という感覚はあまりないんです。自分の好きな感覚で空間をつくりたくて。ただ、それが商売と結びつかなければならないので、ものを売るという制限の中でどこまで好きなディスプレイができるかというのを実験的にやっているという感覚です。


大きい配置換えは月に一度、小物のディスプレイは頻繁に変えるという。
今後はものを売るだけではなく、展示の開催や家具のデザイン、そして他ジャンルとの関わりも持ちたいと話す伊藤さん。

ー京都でお店を続けている理由はありますか。

伊藤さん:関西にも面白いお店が増えていると感じたからです。古道具屋で言うと「京都ふるどうぐ市」あたりから流れが少し変わってきている気がします。例えば、東京とかでも他の店舗の影響を顕著に感じたりすることってあるんですけど、その点京都は良い距離感だったんじゃないかと思います。一応お互い知ってはいるし影響は受けるけど、僕がお店を始める前から各々の嗜好性がすごく強いお店が多くて。いい意味で癖があるお店が多いイメージです。

itou
京都市左京区一乗寺出口町7 2F
営業時間:11:00~19:00
※営業日は下記サイトにて要確認
https://itou-mono.com/

03 Pauls Boutique Antiques(古着店)の場合

河原町三条の交差点から看板を目印に通りを曲がると小さな古着屋が現れる。「Pauls Boutique Antiques」は店主の倉森猛さんが1995年から始めたお店。店内には1950〜70年代のアメリカンビンテージの数々が隙間なく並び、自分に合ったお宝を掘り出す感覚が楽しい。

「昔はこの辺りも服屋や飲食店などが多く、もっとごちゃごちゃしていました。だいぶ整理整頓されましたね」と倉森さん。

オープンから今年で26年。京都らしく言えば「老舗」だろう。この場所で、長い間眠る掘り出し物とは。

天井まで吊られたビンテージコレクションの数々は圧巻。

 

ーなかなか価値に気づいてもらえない掘り出し物の紹介をお願いします。

倉森さん:ディオールのヘルメットです。これは店に出して10年くらい経つかな。

レジの後ろが定位置。売り物だとさえ思わないお客さんもいるとか。

ー仕入れた経緯を教えてください。

倉森さん:カナダの蚤の市で見つけました。おそらく20年以上前のものになるんですけど。もともとディオールにサングラス部門というのがあって、そこでサングラスを販売する時に展示用みたいな感じでつくられたものらしいです。

ー推しのポイントはどこでしょうか。

倉森さん:やはり、今探そうと思ってもないものですし、新品未使用でゴーグルも完全にセットでついているというところでしょうか。まぁ、でもあまり普段かぶる機会がないというか(笑)。飾ったりするだけでも素敵だと思いますね。

販売時のタグまでそのままというかなりの美品。

ーコレクションとしてもかなり価値がありそうです。

倉森さん:そうですね。もともと1950〜70年代くらいのアメリカンビンテージが好きで、これ以外にも少し価値のついたコレクション物なんかも置いています。

スタンダードなものから一点ものまで。特にアロハシャツは全国から探しに来る方も多いのだとか。

ー業界ではかなりの老舗かと思いますが、京都の古着界を見渡して変化などありますか。

倉森さん:店舗数はかなり増えましたね。ただ、一口に古着と言っても、価格もジャンルもたくさんあります。店によってかなり細分化されているので、例えば3千円でシャツを探そうと思えばパッと買えるところもありますし、1万円でもいいから誰も着ていないものが欲しいという方は、うちのようなところに来たらいいと思います。お客さん自身がそれぞれの価値を把握されていたら、目的に合った使い分けが出来るんじゃないでしょうか。

ーお客さんも昔からの方が多いのでしょうか。

倉森さん:始めた頃から来ていただいているお客さんもたくさんいます。「まだやっとるで」みたいな感じ(笑)。でもやっぱり回転と言いますか、来ないようになってまた別の若いお客さんが来たりとか世代交代していっている感じですかね。あとは場所柄、芸人さんとかが舞台やテレビで着る衣装を買いに来られたりもしますよ。


もともとバーテンダーだったという倉森さん。その名残でビンテージのグラスや灰皿なども扱う。
店内には、愛猫ミャンミャンの姿が。

Pauls Boutique Antiques
京都市中京区河原町三条下る大国町55-1
営業時間:12:00〜20:00
定休日:火曜
https://ameblo.jp/pauls-b

04 100000tアローントコ(レコード・CD・古本店)の場合

京都市役所のご近所、寺町通沿いにある「100000tアローントコ」。レコードをメインにしながら、CDや古本、古着を扱う。店主の加地猛さんのキャラクターもあいまって、カジュアルでふらっと立ち寄りたくなる名店だ。


レコードボックスに連なる多数のアーティストや文化人らのサインから、この場所の愛され度合いがわかる。
釣り」と描かれたナイスすぎるTシャツで迎えてくれた店主の加地さん。

 

ーそれでは紹介をお願いします。

加地さん:うち、レコード屋やけど、今回レコードはなし。面白い話があるやつを紹介します(笑)。まずこれなんやけど。

20世紀後半のフランスを代表する具象画家のひとり、ベルナール・ビュフェの2冊組み画集。

加地さん:人気のある画家さんみたいで、絵がめっちゃ良い。ネットでもそれなりに動いている商品みたいなんやけど、とにかく重すぎて(笑)。

ー重い……!

加地さん:最近、分厚い「鈍器本」とか話題ですけど、これはもはやそれ以上のレベル。多分あまりの重量感ゆえにみんな手に取ろうとすらしていないんじゃないかな。

両手で持つのがやっと。

ーどのくらい眠っていた商品ですか。

加地さん:5年くらいかな。これは画家の方が亡くなった時に、お家に本を買い取りに行った先で見つけました。やっぱり画家さんやから、お家もなんか丸みのある可愛いお家で、他にあった画集とかもすごく面白かった。ただ、どれも絵を描きながら見ていたんかな、ベタベタのやつが多くて(笑)。そこから救い出してきました。この画集もこれだけ大きければ普通はたまに見て、あとは飾るとかなんやろうけど、きっと見ながら絵を描いてはったんやろうな。中身もかなりいいものやし、ネットに出したらすぐ売れるのかもしれへんけど、5年間それをせずに待っています。

黒く鋭い描写と抑制された色彩が特徴のビュフェ。初期作品から晩年まで圧巻のアーカイブ。

ーぜひお店で出合って欲しいですね。商品は他にもあるとか?

加地さん:2つ目はこれ。うちは古着もやってて、密かに新入荷もあるんやけど、これは永遠にある(笑)。

登場したのは、強烈なインパクトのお魚柄パンツ。

加地さん:こんな珍しい柄ってちょっとした冒険心で買ったりするやん? ただ、これがなんで売れないかというと、値段を高くしているんです。

値札に書かれた価格は8,000円。たしかに冒険するには高い?

加地さん:そんなに生地がいいわけでもないし、それでこの値段はないやろうっていう。でもこれには理由があって。

ー気になります。

加地さん:昔、ボ・ガンボスっていうちょっと伝説的なバンドがあって、これはそのリーダーのどんとさんが履いていたパンツ。昔から京都で音楽活動をしている友達がいて、その人がどんとさんと仲良かったんやけど、これを「加地くんに託すわ」って持ってきたっていう。だから信憑性はすごく高いんやけど、なんせ血統書みたいなのがあるわけではないから、あんまり大声では言ってないのよ。ただ、その経緯を知っている僕は、これを2千円とかではやっぱりちょっと売られへんやん。だから、これは人知れず高いっていう(笑)。

ー事実なら、掘り出し物というより日本の音楽史に残る遺品ですね。このハッピーな柄だけでは、その価値にまったく気づくことができないです。

加地さん:誰も気づかへんし、僕も本当のところは実際わからんわけで。その持ってきた友人を信じてこの価格にしているわけです。けど、“ただのパンツ”として見ても、なかなかない面白い柄だと思いますよ(笑)。

100000tアローントコ
京都市中京区寺町御池上る上本能寺前町485モーリスビル2F
営業時間:14:00ごろ〜20:00
※定休日は下記SNSにて要確認
https://twitter.com/100000t_A
https://100000t.com/

05 非実用品店めだか(古道具店)の場合

JR円町駅からほど近く。「わかりづらい場所にあります」という事前の連絡通り、細い路地の奥にひっそり佇む古道具屋「非実用品店めだか」。

入口には「佐藤」の表札。店主の佐藤さんがかつては住居として住んでいたらしい。

以前「ものや」を取材した際に、彼らの口から「最近の面白い店」として名が挙がった「非実用品店めだか」。店主の佐藤雅志さんが、昨年始めた、役に立たない“非実用品”を扱うお店だ。一足店に足を踏み入れるや否や、お宝が眠っていそうな雰囲気が漂う。

およそ7畳ほどの空間に所狭しと佐藤さんが選んだ“非実用品”が並ぶ。

 

ー早速ご紹介をお願いします。

佐藤さん:これですかね。


棚の奥から現れたこれは一体?

佐藤さん:これ、石なんですよ。1年以上売れていないんですけど、僕が思うにだるまか何かに見立てて誰がが拾って、それを大事にしてきたのかなと。ただよく見ると質感もちょっと木っぽかったり、重さから実は鉄なのかもって疑ったりもしちゃいますが磁石にはつかないんです。

ーたしかに見慣れない形と質感で思わず立ち止まってしまいそうです。

佐藤さん:ですよね。たしか東寺のガラクタ市で見つけて、もうパッと見で気に入って購入しました。特に気に入っている部分で言うと、やっぱりこの形ですね。ちゃんと自立するところも好き。底も平らになっていて、置く向きが自然と決まっているじゃないですか。横にしては置けないし。

軽々持っているように見えるが実はかなり重い。

ー仕入れの基準はやはり店名にもある“非実用品”でしょうか。

佐藤さん:そうですね。活動当初から掲げているテーマです。僕はもともと、赤瀬川原平さんが唱えた「超芸術トマソン」が好きで。必要のない階段やドアとか、不必要なんだけど、なぜか建物に保存されている無用の長物。そこから着想を得たというか、リスペクトしてという流れです。でも実は、正真正銘の非実用品って案外難しいんですよね。今回のこの石でも言ってしまえば置物になるし。完璧なる非実用品ってなかなかなくて、それってもはやゴミですからね(笑)。


佐藤さんが学生時代にスタートした店舗。膨大な商品の中にはもともと自身のコレクションもあるという。

ー逆にその用途を見出すところに面白さがありそうです。

佐藤さん:ですよね。あと長い間いる商品といえば、もうひとつ。

またしても実用性のなさそうなものが登場……。

佐藤さん:これは、多分タイヤのチューブか何かを廃棄用に溶かして固めたもの。

ーおっしゃる通り、人間にとって「ゴミとは何か」を考えてしまいますね。見事な非実用品ですし、多くの方にとっては買う理由が浮かばない気がします。

佐藤さん:業者の知り合いで考古学をやっている方がいて、その方と一緒に岐阜かどこかの川に土器を見に行ったんです。その時に河原で見つけました。固めた後、どこに行くのか知らないですけど、埋め立てとかされるんですかね。

ー処分する上での効率を考え、ギュッとしたのが、新しい造形になっているというか。

佐藤さん:一応値段はつけているんですけど、そもそも売るようなものでもないのかなとも思っています。こういうのって結局発見する時が一番楽しかったりするじゃないですか。逆に売れたら、僕がびっくりするかもしれない(笑)。ぜひそんなお客さんに会ってみたいです。

開店から約1年。イベント出店など店舗以外の活動にも力を入れていきたいという。今後の動きにも目が離せない。

非実用品店めだか
京都市上京区突抜町434-2
営業時間:13:00〜19:00
※営業日は下記サイトにて要確認
https://hijiteme.com/

 

アーティストの初期作からハイブランドの非売品、伝説のバンドリーダーが着ていた(かもしれない)魚柄のパンツ、素人の手癖が残る陶器に、実用性のない石とタイヤ(圧縮済み)……。「ん〜、たしかに欲しいような、欲しくないような、いや欲しいかもな〜」と編集部も困惑する場面が多々あった今回の企画。5者5様の掘り出し物にあえて共通項を見出すなら、それは“掘り出した物”への店主の深い愛だろう。
すぐに旅立つ子より手のかかる子こそ可愛い、というやつか。いや、腐れ縁のよろしく長い時間が“情”を生むのか。いずれにせよ、お店に眠るお宝商品がどのような人に買われていくのか、ここまで来れば、店主たちもさぞ楽しみだろう。そして「売れ残り商品」もまた運命の買い手が現れるまで、じっとその日を待っていることだろう。

「僕の、私の、本当の価値を知って!」と、「売れ残り商品」の心の叫びを代弁するかのように熱いプレゼンを行ってくださった店主の皆様、本当にありがとうございました。

 

企画編集(敬称略):光川貴浩、河井冬穂、早志祐美(合同会社バンクトゥ)
撮影(敬称略):原祥子