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【任天堂のウワサ】京都は思っていた以上に聖地だった件

「ポmagazine」編集部
「ポmagazine」編集部

噂の広まり

殿堂入り

日本が世界に誇るゲーム会社、任天堂。その本社は京都に存在し、京都府内の売上高ランキング(2021年実績)では、京セラ、村田製作所、日本電産、オムロンらをおさえて堂々の第一位に君臨している。

今年春には創業家の山内家(山内財団、株式会社山内、Yamauchi-No.10 Family Office)が旧本社をリノベーションしたホテルを開業したほか、現本社横に建設予定の新社屋や来年度にオープン予定の資料館など、ここ最近、ビッグニュースが相次ぎ話題を呼んでいる。

そんな任天堂の創業地であることから、とあるゲーム好きによると「任天堂目線で京都を見ると、意外な面白さがある」らしい。そこで今回、編集部では任天堂と京都の街に関わる噂を勝手にリサーチ。「あのゲームがこの場所で!?」「こんなところに聖地が!」などファンのみならず、知っていると思わず誰かに自慢したくなるようなエピソードを集めてみた。

実際に足を運べる場所も多いので、ゲームの世界を飛び出して現地に訪れてみるも良し、噂を知って改めてゲームを楽しんでみるのも良いだろう。「任天堂のウワサ」からはじまる新たな京都の一面を“プレイ”してみてほしい。

1. 任天堂の本社がずっと京都にある理由
2. 創業家の規格外のスピリッツを感じる旧本社ライブラリー
3. ゼルダの伝説のマップには、京都の地図が隠されている?
4. 『スターフォックス』は伏見稲荷の“千本鳥居”から生まれた?
5. 観光客が足を踏み入れない「意外な場所」がゲームの舞台に
6. 「ポケ森」と嵐山駅の“あれ”、「あつ森」では清水寺の横に謎の建物
7. 任天堂とライセンス契約を行うアパレルブランドの謎

1. 任天堂の本社がずっと京都にある理由

1889年、山内房治郎(やまうち・ふさじろう)氏によって花札の製造からはじまった任天堂。創業は京都市下京区とされ、ホテル「丸福樓(まるふくろう)」としてオープンした五条の初代本社、京阪・鳥羽街道駅近くの2代目本社、南区十条の現本社、と何度か移転を重ねながらも創業以来、変わらず京都に本社を置き続けてきた。

なかでも五条の初代本社は、任天堂が花札やかるた、トランプなどを製造していた頃の社屋で、房治郎氏の住居としても使用されていたことから、任天堂ファンの間では聖地のひとつになっている。長年非公開とされてきたが、2022年4月にホテル「丸福樓」としてオープン。館内には初代ファミコンや花札などファン垂涎のコレクションが飾られている。

任天堂本社開発棟
こちらは十条にある現本社の開発棟。任天堂といえばこの景色を思い浮かべる人も多く、記念撮影をする人の姿も

さらに、2023年度には近鉄京都線・小倉駅近くの宇治小倉工場のあった場所に、任天堂が過去に発売した商品を展示する資料館のオープンが予定されており、2027年には現本社横の土地にゲームの研究開発に特化した第二開発棟が竣工予定だ。

今後も京都で紡がれていく任天堂の新たな歴史に胸が高鳴るが、そもそも世界で名を馳せるゲームメーカーが、なぜここまで一貫して「京都」にこだわり続けるのだろう。

そんな問いに対して、数々の名言を残したことでも知られる任天堂の3代目社長・山内溥(ひろし)氏は、あるインタビューで「お墓も京都にあるし私が住んでいる家も祖父が建てたもので、仏壇もあるし」と答えたという。

自身の生まれ育った街で商いを続けていくというシンプルすぎる理由にこちらもシンプルに驚く……そして、山内家の意志を受け継いだのか、これだけのグローバル企業に成長した任天堂が地元・京都にあり続けることにも脱帽する。ちなみに、山内家のみならず、任天堂の4代目社長であり世界的なゲームクリエイターとしても名を馳せた岩田聡(いわた・さとる)氏の葬儀も左京区の岡崎別院で営まれ、その墓は京都にあるといわれている。

「聖地」は、今や作品の舞台となった地を意味するようになったが、創始者の「お墓」や「仏壇」という本来的な意味での聖地であることが、この地に本社を留め、この後に続く“任天堂の聖地巡礼”を可能にしているともいえる。

2. 創業家の規格外のスピリッツを感じる旧本社ライブラリー

京都では、かねてから噂の的だった「任天堂のホテル」こと、丸福樓が開業した。かつて同社の主力商品であった花札やかるたなどの製造販売所でもあった旧本社のリニューアルを、建築家の安藤忠雄氏が監修したことでも話題を呼んでいる。

丸福樓
1930年竣工当時の旧本社の佇まいを残す「丸福樓」。近所に住む人は、その昔、かるたをそろえるカンカンという音が建物から聞こえたという

さて「聖地」という観点から注目したいのは、やはり2階にあるライブラリー「dNa」の存在だろう。任天堂の創業家・山内家のプロデュースにより、マニア垂涎のお宝が並んでいるという。

世界的なクリエイティブ集団・ライゾマティクスが手がけた花札のデジタルアートや、初代ファミコンをはじめ代々のハード機器などが展示されていることは、他のメディアも報じている通りだが、内情を聞いた人からはこんな声が挙がっている。

「まず、このライブラリー自体にまつわる噂なのですが、既にホテルとして完成していた部屋を2つ潰して、3代目社長・山内溥のお孫さんである山内万丈さんが、あくまで個人の部屋として公開しているそうです。ゆえに、一般的な企業倫理では出来ない“自由すぎる展示”がすごいんです」

任天堂の“中興の祖”といわれる溥氏は、全くの新しい製品をつくるためには、常識的な発想の内ではできないことを説いたといわれるが、完成した部屋を潰すとは……これぞ創業家の規格外のスピリッツを感じる。しかも、その展示内容も常人の想像をはるかに超えているというのだ。

「数百年後の未来を想定されて作られたものだと思うのですが、化石になったミュウカードや朽ちたニンテンドーDS。あと、バスキアのものと思われるアート作品もありました。しかもショーケースもなく、手で触れるレベルなんです」。バスキアといえば最近、ZOZOTOWNの前澤友作氏所有の絵画が109億円もの価格で落札されたことで話題になったが、そんな高額美術品かもしれぬ作品が、あけっぴろげに並んでいるのだそう。

丸裸のバスキアに対して、ショーケースにおさめられていたものは、ケント紙で制作された初代ファミコンの模型

しかし、この規格外のライブラリーであっても、あまりのインパクトに展示が叶わなかったものがあるという。それは、どうやら「朽ちたピカチュウ」らしい。最近、永久凍度の中から約3万年前のマンモスの子どもが、皮膚や内臓などほぼ完全な保存状態で発見されたことで話題になったが、もしやこのピカチュウのビジュアルも……お蔵入りにならざるを得ないほどのリアリティだったのだろうか(※あくまで個人の妄想です)。

万丈氏は、ビジネスメディアのインタビューで、「今を生きる人々や未来の人たちに歴史を伝え、記憶をつなぎとめる機能」として、このライブラリーを構想したと語っているが、埋もれた大地からビデオゲームやソフトが発見されるほどの数百年先の未来に、果たして人類はどのように任天堂という“文化”を受け止めるのか。ある種の哲学的な問いかけが、ここにはあるように思う。

山内財団およびYamauchi-No.10 Family Officeは、丸福樓が建つ菊浜学区エリアの12件の土地・建物を取得したことを発表し、今後、同エリアの再開発を進める

3. ゼルダの伝説のマップには、京都の地図が隠されている?

任天堂と京都の関わりは、何もリアルな場としての京都に現れるとは限らない。ゲーム作品の中に、なんともローカルな「京都」が隠されていることがある。

その筆頭というべきなのが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。同作は2017年に発売されたゼルダシリーズ初のオープンワールドのゲームだが、そのゲームフィールドはどうやら、京都の街の地図がベースになっているらしい。プレイしたことのある人は、いやいや、あのゲームってフィールドが碁盤の目になっているわけでもないし、清水寺や金閣寺が登場するわけでもないし、と思うかもしれないが、本当の話だ。同作のディレクター・藤林秀麿氏が「GAME Watch」はじめいくつかのインタビューで、そのことを認めている。

藤林氏によると、本作が京都をベースにしているのは、そのスケール。オープンワールドのゲームには、プレイヤーが自由に動き回る広大なフィールドが必要だが、任天堂の制作チームはこうしたゲームに挑むのがはじめてで、どれくらいの広さが適正なのか、どういう距離感で建物を配置すればいいのかわからなかった。そこで、京都の地図をベースにすることを思いついたのだという。

「ゲーム中にGoogleから取ってきたマップを貼り付けて、二条城にどれくらいあったらたどり着けるのか、御所から京都タワーがどれくらいの距離で見えるのか考えた」(「GAME Watch」に掲載された藤林氏のインタビュー)と語っているように、地図を参考にするだけではなく、距離感を実感としてつかむために、スタッフが京都の街を歩き回ることもあったようだ。

京都の風景
広すぎず狭すぎない、ちょうどいい街のサイズ感である京都。ゆえにゲームに適したリアリティを生んだのだろう

また、同作にはプレイヤーの心を引き寄せる“引力ロケーション”と呼ばれる場所がいくつも用意されているが、この引力ロケーションの誘導物をどれくらいの数や間隔で配置するかについても、実際の京都の街にあるコンビニやポストの数を参考に決めていったのだという。

壮大な伝説の舞台「ハイラルの大地」が、コンビニもあるリアルな京都がベースになっていたとは……。しかも、両者はスケールが同じというだけではなく、ファンの間では「ゲームマップを京都の地図と重ね合わせると、ハイラル城のある場所には京都御所があった」なんていう噂もまことしやかに流れている。「もしやこの寺はあのダンジョンか……」などと妄想しながら、京都の街を散策するのも楽しいかもしれない。

4. 『スターフォックス』は伏見稲荷の“千本鳥居”から生まれた?

伏見稲荷大社といえば、1300年の歴史を持つ全国の「お稲荷さん」の総本山で、京都屈指の観光名所。この場所から、戦闘機で宇宙を飛び回る任天堂のシューティングゲームが生まれた、と聞くと、あなたは信じるだろうか。

しかし、これもまた事実らしい。スーパーファミコン時代の名作ゲーム『スターフォックス』では戦闘機に乗るパイロットのキャラクターが「キツネ」なのだが、それは「伏見稲荷」から着想を得たものなのだという。たしかに、任天堂の社屋はかつてこの伏見稲荷のそばにあり、そこには「お狐様」が神の使いとして鎮座している。だからといってシューティングゲームでなぜお稲荷さん?ていうか、そもそもなぜキツネなのだろう?きっかけは、無数の鳥居がまるで合わせ鏡のように連続している、伏見稲荷の名物「千本鳥居」らしい。

伏見稲荷 千本鳥居
伏見稲荷の千本鳥居。ここに『スターフォックス』の原点が?

スーパーマリオの生みの親で『スターフォックス』の開発責任者だった宮本茂氏が任天堂のウェブサイトで語ったところによると、キャラクターに動物を使おうということになって、どの動物にするか悩んでいた。そのとき、頭に浮かんだのが、このゲームの試作版に戦闘機がゲートをくぐっていくシーンがたくさん出てくることだったという。「くぐる」といえば「鳥居」、「鳥居」といえば「伏見稲荷」と連想が広がっていき、最終的に伏見稲荷の「狐」が選ばれたらしい。

冗談のような話だが、ゲームづくりにあたって、デザイナーが最初に書いたコンセプトアートには、キャラクターのフォックスの足元にしっかり「鳥居」が描かれていたとか。

1300年の歴史を持つ神社が、宇宙を飛び回るゲームのモチーフになったというのは、京都に本社がある任天堂ならではだが、一方、宮本氏は先のインタビューで『スターフォックス』というタイトルについて「地元に『稲荷フォックス』という少年野球チームもあったので、『フォックス! かっこいいなあ』と思って」とも語っている。グローバルな任天堂は、ローカル愛もスゴイのである。

5. 観光客が足を踏み入れない「意外な場所」がゲームの舞台に

名所旧跡でもなんでもない、むしろ観光客の想像する京都とはかけ離れた場所がゲームの舞台に選ばれているケースもある。

2015年に発売され、不良っぽいイカの変身キャラがインクを撃ちあうというユニークな設定で国内累計100万本以上の大ヒットとなった『スプラトゥーン』。このゲームは16種類のステージから構成されているのだが、そのなかに「デカライン高架下」と名付けられたステージがある。

車が行き交う姿も見え、文字通りインターチェンジか何かの高架下らしきステージなのだが、実は当の任天堂がモデルになった実在の場所を明らかにしている。ヒントは「デカライン」というネーミング。デカはギリシャ語で「10」という意味、そしてラインは「線」や「筋」。京都といえば、碁盤の目の横の通りに、一条通、二条通、三条通と名前がついているが、「デカライン」はその最も南にある「十条通」を指しているらしい。

ちなみに、この十条通は、任天堂のゲーム開発部門が入る「本社開発棟」の建物が面している通りであり、そこから700〜800m東に行くと、第二京阪道路鴨川西ICにぶつかる。インター出口のゆるやかなカーブ、どこかで見たことがある標識や電柱。そう、このインターの下が、「デカライン高架下」だ。

第二京阪道路鴨川西IC
第二京阪道路鴨川西ICは、何の変哲もない一見普通のインターチェンジ

しかし、である。改めてこの場所に立ってみると、産業道路が交差し、倉庫やメーカーの巨大な建物が建ち並ぶ、かなり荒涼とした印象。緑もほとんどなく、京都というより、地方都市の埋立地の風景とかに近い。高架のスケールも同じ京都の大山崎ジャンクションなどに比べると、たいしたことがない。

一体どうしてこんなマイナーな場所を……と思ってしまいそうになるが、もちろんここがモデルになったのには理由がある。同作プロデューサーの野上恒氏、ディレクターの天野裕介氏、阪口翼氏の鼎談(『週刊ファミ通』2016年1月7・14・21日合併号に掲載)によると、「デカライン高架下」を発見したのは、『スプラトゥーン』アートディレクターの井上精太氏。井上氏は毎日食べるパンとか、会社から見える風景などをずっとスケッチしているような人で、この場所もやはりよくスケッチしていたらしい。

一見、何の変哲もない高架下に見えるが、本作のための条件がすべてハマった場所だった。不良っぽいイカたちのナワバリバトルという設定にリアリティを与える裏路地感、全体の色彩はグレーが基調だからインクが飛び散った時に色が映え、建物が直線で構成されているから、わかりやすい……。そう、いわゆる京都らしさとは真逆の、ちょっと荒涼感のあるこのマイナーな場所こそが、『スプラトゥーン』のバトルを盛り上げるには最高の舞台だったのだ。

ちなみに、『スプラトゥーン』のほかの15のステージでは、すべて、「ホッケふ頭」「モズク農園」「ネギトロ炭鉱」など、魚や海産物をもじった名前がついているが、唯一「デカライン高架下」だけは海産物ではなく、場所を示すネーミングで、しかも前述したようにモデルになった場所もきちんと公表されている。任天堂の制作チームの人たちは、会社の近くにあるこのマイナーな高架下のことが、実はけっこう本気で好きなんじゃないだろうか。

6. 「ポケ森」と嵐山駅の“あれ”、「あつ森」では清水寺の横に謎の建物

 任天堂のゲームに登場する京都ネタは意外にわかりづらい。わざと説明せずにこっそり忍ばせている小ネタも多く、普通にプレイしているだけの人は、ほとんどスルーしてしまう。

たとえば、「どうぶつの森」シリーズのスマホ向けゲーム「ポケ森」(『どうぶつの森 ポケットキャンプ』)に登場した「キモノフォレスト」風のポールなんて、典型だろう。「キモノフォレスト」とは、嵐山観光の入り口である嵐電・嵐山駅にあるオブジェ。京友禅を使った細長いポールが駅構内や線路脇に約600本も建てられており、夜になるとそれが一斉に点灯してなかなかきれいなのだが、嵐山では渡月橋ほどのメジャーなアイコンではない。

キモノフォレスト
嵐山駅にある「キモノフォレスト」。京友禅を使用したポールが約600本ほど並ぶ

ところが、「ポケ森」で「夏祭り・縁日風レイアウト」のイベントが開催されたとき、お祭りアイテムのひとつに、この「キモノフォレスト」とそっくりの光るポールがさりげなくアップされたのである。プレイヤーからは「きれい!」という声が多数上がり、実際、レイアウトに使っている人も多かったが、キモノフォレストに似ていることに気づいた人はごくごくわずか。わかる人にだけわかるマニアックな京都ネタとなった。

このマニアックな姿勢は、ゲームのネーミングにもいかされている。京都といえば、古くから続く町名をいまだに使っていることで有名だが、この昔ながらの難解な地名を、こっそりキャラの名前に忍ばせていたりするのだ。たとえば、『ピクミン』の「ホコタテ星」は、任天堂本社のある南区上鳥羽鉾立町(ほこたてちょう)からとったものと思われるし、『ファイアーエムブレムif』の京都弁キャラ「モズメ」も、現在は向日市の一部になったものの「物集女町」が由来ではないか、といわれている。

物集女町
京都の難読地名として頻出する「物集女町」。多くの人が「ものあつめおんな」と読んでしまう

マニアックな京都ネタといえば、きわめつきが『あつまれ 動物の森』に登場した京都のペナントだろう。細長い三角形の布に観光スポットの絵や刺繍が入っている、昔、修学旅行生がよく買っていたアレだが、「あつ森」では「京都」という大きな文字の横に金閣寺と清水寺と大文字という王道の京都ペナントがアイテムとして売られていた。

「めずらしくわかりやすい京都だな」と思っていると、実はこのペナントには、もうひとつ別の建物が描かれていた。神社でも寺でもない、普通に四角いビルが。いや、マジな話、これが本当に四角いだけで特徴がないのだ。京都らしさどころか、なんの「らしさ」も面白みもない四角いビル。なんで京都のペナントに、こんなものが……。ん、待てよ。そういえば、任天堂って、ネットでよく「ゲームは面白いのに、四角い社屋は面白くない」「豆腐みたいに四角いだけの本社ビル」などと突っ込まれてなかったか?それに、ペナントのビルをよく見ると、任天堂本社と同じ位置にロゴらしきものが描かれている……。

というわけで、ペナントの四角いビルの正体は、ほかでもない任天堂本社。めずらしく、わかりやすい京都アイテムを出してきたと思ったら、実はこっそりマニアックな自虐ネタを仕込んでいたのである。まったく油断も隙もないが、でも、考えてみたら任天堂のゲームって、プレイヤーがなかなか見つけることのできない隠れキャラや裏技、抜け道などが必ず仕込まれている。「京都愛」を表現するときだって、わかりやすいことはやらないよ、隠しといたからあとはみんなで勝手に探してちょうだい、というのが“任天堂流”なのだろう。

7. 任天堂とライセンス契約を行うアパレルブランドの謎

ラストは、聖地巡礼の際にはぜひとも立ち寄ってもらいたいショップを紹介したい。地下鉄烏丸線・五条駅のほど近くにある「エディットモード」は、江南匡晃(えなみ・まさあき)さんが代表を務めるゲームアパレル会社。2002年に任天堂と国内初のライセンス契約を締結し、オリジナルブランド「THE KING OF GAMES(ザ キング オブ ゲームズ)」を設立。以来、現在に至るまで20年間、任天堂をはじめとするビデオゲームのアパレル商品を制作・販売している。

ご存知の通り、俗に「ドンキーコング裁判」や「マリカー裁判」「ユリゲラー裁判」と呼ばれる数々の法廷闘争を制してきた任天堂法務部は、ネット界隈では「法曹界最強の存在」と噂され、知的財産には非常に厳しいことで有名だ。その任天堂に「公認」というお墨付きをどのように得たのだろうか。

しかし、そのきっかけは、なんともアットホームな話で肩透かしをくらう。もともと江南さんが務めていた京都のアパレルショップに、たまたま任天堂の社員さんが訪れ、その方が着ていた任天堂ロゴのTシャツに惚れ込んだのが事の発端。生粋の任天堂好きである江南さんが熱狂できるアパレル商品をつくりたい、と自ら任天堂に売り込み、何度も試作や調整を重ね、2年の歳月をかけて商品化に至ったのだそう。

マリオTシャツ
第一号であるマリオのTシャツは、マリオ誕生20周年を記念したデザイン

「ライセンス商品だからといってキャラクターをただそのまま貼りつけるのではなく、そのゲームのファンが共通して持っている感覚とか思い入れみたいなのを表現したい」と江南さん。これまでに「THE KING OF GAMES」で開発した商品は100種類以上に及ぶが、どの商品にもゲームファンの心をくすぐる細かいこだわりが詰まっている。

スプラトゥーンTシャツ
『スプラトゥーン』に登場する、人の姿になれるイカたちが身につけているTシャツがモチーフに

『スプラトゥーン』のゲーム内でキャラクターが着用しているTシャツを実際に着られるようにと商品化する一方で、「THE KING OF GAMES」から発売したTシャツがゲーム内にも登場している(Wii U版スプラトゥーンで先ほどのマリオTシャツも登場しているそう)。ゲームの世界とリアルを地続きにした仕掛けがアツい!

アパレル商品
ライセンス契約は1アイテムごとのため、今でも新商品のたびに企画書を提出し、契約を結んでいるという。それを20年ってすごい……
パッケージ
Tシャツのパッケージは、ファミコンカセットの箱を完全再現。当時、実際にファミコンの箱をつくり、現在も任天堂のパッケージを手がける京都の印刷会社に依頼するというこだわりぶり

「エディットモード」がゲームファンの聖地と呼ばれる理由はこれだけではない。町家を改装したオフィス内には所狭しと江南さんのゲームコレクションが並ぶ。その物量にゲーム好きではなくても圧倒されること間違いない。「自分が子どもの時に感じたわくわく感みたいなのを共感してもらいたい」と江南さん。

ゲームコレクション
フィギュアなどが並ぶ圧巻のコレクション棚。ここには並びきらないものも多いらしく、たまに入れ替えも行うのだとか
金のマリオ
「任天堂エンターテイメント」の加盟店に飾られていた金色のマリオ。商品ではなかったが閉店した際に市場に出回り、当時マニアの間ではこの金のマリオをいくつ持っているかが競われたのだとか
ゼルダコーナー
こちらはゼルダコーナー。あるお客さんによると、マリオやゼルダを作った宮本茂氏は東福寺が好きで、任天堂が旧本社だったころ、度々通う様子が目撃されていたらしい

コレクションの中には購入できるものもあり、宝探しのような感覚が楽しい。さらに公開はしていないが、地下の元防空壕だった空間を利用して入りきらないコレクションや、ファミコン全種類も眠っているのだとか。あふれるゲーム愛のもとに生まれた公式も認めるアパレル商品と、コレクションの数々、ここを訪れずして京都の“任天堂聖地巡礼”は完結しないだろう。

ゲームコレクション

ゲームコレクション

お店はオープンオフィスとして2ヶ月に1度ほど開かれる。詳細はSNSなどを要チェック

次回以降のオープン予定はこちら。
2022年8月11日(木)〜8月14(日)
2022年9月17日(土)〜9月19日(月)
2022年9月23日(金)〜9月25日(日)
※ いずれも13:00〜18:00

 

今回紹介したスポットをまとめたマップがこちら。任天堂の聖地巡礼にぜひ活用してほしい。

 

〈ポmagazine編集部より〉
当メディアでは、通常の記事掲載においては掲載先への承諾(事前チェック)を経て記事を掲載しております。しかし、本記事においては、個人の主観や噂話を重視しており、一部掲載先への確認を行わずに公開しております。掲載情報や内容の誤り・真偽について、万が一、間違い等がございましたら訂正に応じたいと考えております。(問い合わせ先:contact@potel.jp

 

企画編集:光川貴浩、河井冬穂、早志祐美(合同会社バンクトゥ)、川端平気、秋吉慧一

 

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