0

【水無月44種食べ比べ】京都人の「水無月」への情熱は異常らしい

かがたにのりこ
ライター

噂の広まり

井戸端会議

水無月、言わずと知れた旧暦6月の異称である。が、京都に暮らす人にとっては、6月30日に食べる生菓子の呼び名の方が親しみ深いかもしれない。

ことの発端は、一枚のチラシ。

両面にびっしりと並ぶのは、水無月、水無月、水無月……!(画像提供:京都高島屋)

毎年6月に京都高島屋がおこなう水無月の催事に合わせて配布されるもので、なんと両面には催事で販売される約50種類もの水無月が……。圧倒的に豆豆しい。そのビジュアルインパクトに圧倒されるが、京都人の水無月への愛がうまく表現されているように思う。

事実、6月30日付近や限定販売の日には、朝から列をなすこともあるらしく、例年大好評の催事なのだそう。もちろん、それぞれの和菓子屋さんでも販売されるが、夕方になると「売切御免」の看板も見かける。

ある京都人によると、6月になるとソワソワしだし、どこの水無月を食べるのかというある種の脅迫観念に襲われるという。水無月を食べるのは「マスト1回(必ず1回は食べるの意)」、人によっては何度も買いに行ったり、“はしご”するのだそう。その様子について「京都人が小躍りしている。いや狂喜乱舞している」と表現してくれた。

京都には水無月に限らず「この日にこれを食べると無病息災になる」など数多くの「行事食」があるのだが、なかでも京都人が愛してやまないのが水無月なのである。“異常”ともいえるこの水無月への情熱を伝えるべく、無謀にも京都の水無月44種類を食べ比べしてみた。

食べ比べをお願いしたのは、月に2度自宅であんこを炊くというライター・かがたにのりこさん。毎年6月になると取材はもちろん、個人的にも数種類の水無月を食べるといい、この無謀な企画に快く協力いただいた。生粋のあんこ好きであるかがたにさんならではのマニアックすぎるレビューは必見。ただし、食べ比べとはいえ、ランキング化などの無粋なことはせず、あくまで一つひとつの水無月に向き合うことにした。

水無月にまだ馴染みのない人は、まず気になるものを見つけて、ベテランさんは、いつもと違う店の水無月を食べてみようと思った際の参考になることを願って実直にレビューをおこなった。

そもそも水無月とは?

44種類をいざ食べ比べの前に、少しだけ予備知識を。そもそも水無月とは、1年の半分にあたる6月30日に、これまでの半年の穢れを払い、残りの半年の無病息災を願う「夏越しの祓」の行事の一環として食べる、いわば行事食。

つくり方は、小麦粉、米粉、砂糖を混ぜ、水で練った「ういろう」生地を蒸籠に流し込んで蒸し、その上に蜜漬けした小豆や甘納豆をのせて再び蒸し上げる。米粉や小麦粉ではなく葛粉でつくる和菓子店も(画像:photoAC)

その昔、御所では、冬にできた天然氷を「氷室(ひむろ)」と呼ばれる貯蔵庫に保管して、6月30日に献上された氷を口にして暑気払いをしたらしい。そして、冷蔵庫も冷凍庫もない時代に氷を口にすることができない庶民が、氷に憧れてこしらえたのが「水無月」だったのだそう。

散らした小豆の赤色は邪気を払うと信じられ、三角形のういろうは氷を表しているのだと教えてもらったのは、大学時代のバイト先にて。当時は、マジか、大丈夫か、いにしえの京都人……全然、氷に似てへんぞ、と思ったものだ。そもそも、当時の庶民は氷を目にすることすらなかったんじゃないだろうか。ひょっとしてこれは、いにしえの京都人による「ぼくのかんがえた、さいきょうの氷のお菓子」なのかも。だとしたら、かなり愛おしい。

6月の京都であれば、小さな和菓子屋でも簡単に手に入る水無月だが、今でも「夏越しの祓」である6月30日当日にしか販売しないというところも。なお、「年越しの祓」に食べる年越しそばが大晦日のうちに食べるのが大切なように、水無月も6月30日中にいただくのが大切なので、そこはお忘れなきよう。

そして、こちらが今回食べ比べをおこなった、44種の水無月たち。

小麦粉や米粉でできた生地は意外とお腹に溜まるため、2日間に分けて実施

水無月44種比較表

さて、このずらりと並んだ水無月を、独自指標をもとに比較表を作成してみた。ぜひ、ダウンロードして毎年6月に活用してほしい。

【ポmagazine】水無月44種比較表

※ 商品や料金などの掲載内容は、2021年6月に調査したデータになります。

 

土台の硬さは、断面の違いや食感から5段階で評価。やわらかいものや口溶けの早いものほど1に近く、噛みごたえのあるものや口溶けの遅いものほど5に近い。

生地がしっかりしたものほど切り口にエッジが立ち、柔らかいものには丸みが見て取れる
手前が葛製で、奥がういろう製。生地の種類も、断面で比べるとその差は歴然

なお、辺の長さや厚み、グラム、小豆の粒の数などの計測データは個体差による誤差があるものとする。価格は2021年6月時点のもの。また、レビューについてはあくまで筆者の主観によるものなので参考程度に。

店名を記したふせんが外れると大惨事。風よ吹くな……!

※掲載順は順不同。(撮影が済んだものから、筆者が食べた順)

 

001 二條若狭屋


不朽の名作「不老泉」や、キュートなアマビエの生菓子で知られる名店の水無月は、ピシッと角の立った端正なビジュアル。単体で見ている分には気づかなかったが、他店と並べてみると小豆の色が淡く明るい。甘さは穏やか。ツヤ感も控えめで、なんというか、すっぴん美人(に見えるけど、きちんとお手入れされている)という感じ。ういろうはモッチリと粘る一歩手前で噛み切れる、モクッとした歯切れの良さで食べやすい。

 

002 長五郎餅本舗



かの豊臣秀吉公が開いた北野大茶会にて、大層気に入られたという「長五郎餅」を今に伝える老舗の水無月。ふたつ目にして、すでに個性の強さが伝わってくる。原材料の表示順は米粉より小麦粉の方が先になっているが、米の風味がガツンとやってくる。鼻に抜ける香りが、完全に餅を食べたときのそれ。甘納豆が埋め込まれたような見た目も特徴的。ういろうが主役!といった感じだが、甘納豆は数が少ない分、かえって存在感は増しているかもしれない。

 

003 出町ふたば



名代・豆餅で他府県の方にもおなじみの人気店。丹波大納言小豆の赤みが強く、邪気払いの威力への期待もいや増すばかり! ふっくらと仕上げた甘納豆が真上から見てもびっしりと。隙間もういろうで覆われて固定されているので、切り口は崩れることなくソリッドながら、食べてみると甘納豆部分はとてもやわらかい。見た目の粒感とのギャップが楽しめるのは、皮は薄く、煮ても腹割れしにくい大納言小豆ならでは。

 

004 井筒八ツ橋



京都土産の代表格、八ツ橋の名店。大粒の大納言小豆に、やや厚みのある白肌のういろう。寒天コーティングがされているので、透明感のある表面が美しい。ういろうには小麦粉・米粉・でん粉を使っており、もっちりと弾力のある食感が印象的。

 

005 千本玉壽軒



やはり上菓子屋さん(献上菓子や茶の湯で用いられる菓子をつくる店)の水無月は角がピシッと立っている。やや黄味がかったういろう生地からほんのりと塩気を感じたのが意外さもあって印象に残った。ふっくらとした小豆がびっしり。表面も軽くコーティングされているため、切り口はソリッド。360°どこから見ても乱れを感じさせない美しいビジュアル。

 

006 塩芳軒



続いても上菓子屋さん。みなさんももはや外見だけで、お店のジャンルの見分けがつくようになってきたのでは? 太閤秀吉が築いた聚楽第跡にほど近い場所に店を構える西陣の名店。まず、これまでと違ったのは、ういろうの色味。おしゃれマダムが着ていそうな、くすみグレージュ系で、食感はプリッとしているような、つるんとしているような、とにかく重くない不思議な食べ心地。小豆が「ほくほく」>「しっとり」だったのもチャームポイント。

 

007 笹屋春信



実は和菓子激戦区である西京区・桂に店を構える人気の上菓子屋さん。美しいことは予想済みだったにもかかわらず、目の前に来た瞬間「きれいだねー」と『世界ネコ歩き』の岩合さん化してしまう。薄づきでクリアな寒天コーティングに守られた小豆がほどよく粒感を残している。容器の底面に経木(きょうぎ・へぎ:紙のように薄く木を削った板)が敷かれているため、ういろうにほんのりと木の移り香があるのも良き。

 

008 鼓月 抹茶



波打ったヴァッフェル生地にクリームを挟んだ「千寿せんべい」でおなじみの有名店。もうひと突きすれば煮崩れてしまいそうなほど、見るからにやわらかい小豆はこれまで食べた7軒に比べるとやや甘めの仕上がり。抹茶味のういろうはもっちりどっしりとした食べ応えのあるタイプ。塩気がきいていることで、甘めの小豆もバランスよく食べられる。

 

009 鼓月 白



こちらも同様に、やわらかめの小豆とほんのり塩気のあるういろうのコンビ。

 

010 永楽屋 白



佃煮と和菓子を販売する京都の老舗の水無月は、ひと目で分かる小豆の大粒感がゴージャス! 丹波大納言をたっぷりと敷き詰めたところにうっすらと寒天でコーティングされたキラキラのビジュアルも美しい。むっちりとやや硬めのういろうは、一口目より少し遅れて甘さと香りが追いかけてくる。

 

011 永楽屋 黒糖



沖縄県波照間産の黒糖を使用したういろう生地は、しっかりと黒糖の味と香りが感じられる。黒糖の強さとしては「かりんとう」を食べた時の印象に近いかも。確かにこの黒糖感には普通の小豆では負けてしまうので、風味豊かな丹波大納言を使っていることにも納得の一品。

 

012 永楽屋 抹茶


ふと気づいたのだが、こちらのお店の水無月は端を落としていない……! ふくふくの大納言が三角形の一辺にだけ行儀よく粒が並んでいるのが、なんだかカワイイ。サンドイッチの断面を美しく仕上げるときにパンの耳を切り落とすように、ういろうの端を切り落とさなくても美しい仕上がりなのがすごい。ういろうはお皿にはむっちりと貼り付くけれど、歯にはくっつかないのもさすが。なお、抹茶は黒糖に比べると風味はやさしめ。

 

013 中村軒 白



桂離宮前の店舗が2021年に改修を終え、リニューアルオープンでますます元気な老舗和菓子店。名物「麦代餅」も食べ応えのある一品だが、こちらの水無月も今回のラインナップ中、白と抹茶が最重量スコアを獲得! しっとり&ほくほくの大粒の小豆は自家製の濡れ納豆を使用している。

 

014 中村軒 抹茶


ういろうの端がピッと立ち上がっていたので、これは端を切り落としていないタイプだと分かりやすかった。端っこスキーなのでうれしい。こちらは抹茶のういろうにうぐいす豆をのせており、小豆とはまったく違う香りと食感が楽しめる。特にこういう食べ比べ企画のときはとてもありがたい存在。

 

015 中村軒 黒糖


黒糖はほんのり感じられる程度で、小豆の風味がちゃんと味わえる。

 

016 五建外良屋


京都でういろう専門店といえば、ここ。ういろうは、漢字で「外郎」と書くことが多いが、こちらでは「外良」と表記されている。包装はプラ容器だったのに、木の良い香りがするうれしいサプライズ。そういえば売り場の什器に経木が敷いてあったかも。大粒でふっくらとした小豆は、見た目通りやわらかめ。ういろう生地のもちもち感が絶妙で、飽きがこない予感を抱かせるところに専門店の矜持を感じる。

 

017 亀屋良長 白



銘菓「烏羽玉」やヒット作「スライスようかん」で幅広い年齢層に愛され、伝統と革新を体現する京都の老舗。たっぷりとのせられた大納言小豆が大きい!うっすらとコーティングもされている。ういろうには気づくか気づかないかくらいのほんのりとした塩気あり。撮影と計量の助っ人さんが一口食べて「んっ!!!」となっていた。あなたは今、好みの水無月に出逢いましたね、とうれしくなった。

 

018 亀屋良長 抹茶



上菓子屋さんらしく、ピシッと端正なビジュアル。抹茶の色は深いが、色の印象に比べると抹茶の風味は控えめ。余韻としては大納言小豆の風味が勝利。

 

019 京阿月 大納言



雑穀問屋に端を発する江戸期創業の老舗で、昭和15年に4代目が甘党のお店を開いたのが和菓子店のはじまり。素材選びの確かさを感じさせる大粒の大納言小豆。表面が平らになりそうなギリギリまでたっぷりコーティングされている。透明感のある白ういろうは甘め。

 

020 京阿月 うぐいす



ほっくりとしたうぐいす豆が香り豊かで、ぷりんっと弾む食感のういろうとのバランスも秀逸。

 

021 京阿月 黒糖



黒糖のういろうの上だと、一層ツヤピカに見える大納言小豆。黒糖感は中村軒と永楽屋の中間くらい。

 

022 半兵衛麩



ちっちゃ! かわいっ! とおもわず声が漏れる小ぶりなサイズ。ういろうとはまた違う、生麩ならではのモチモチ感というか、噛み応えが凄い。味の組み合わせとしては麩饅頭先輩がいるので心配は無用だが、こし餡が主流の麩饅頭とは異なる粒感が新鮮。

 

ここまでが1日目に入手して食べたラインナップ。
2日連続はなかなかキツそうなので、1日空けて残りの22個を入手。

————–

後半戦に突入!
また、ひとりで食べていると何かの修行に思えてきたので、2日目は一緒に食べてくれる助っ人に来てもらうことにした。誰かと一緒に食べると水無月はさらにおいしい……!

 

023 叶匠壽庵



滋賀県大津市に本社を構え、六万三千坪の山を開墾し、菓子の原料となる農作物を育てるなど、素材へのこだわりが際立つ和菓子店の水無月は大粒の大納言小豆を使い、乗っている粒の数でも今回はトップクラス。2段になっている部分もあるくらい、小豆の乗せ方がラフである。やや透明感のあるういろうはやわらかめで、みずみずしい食べ心地。余談だが、4個入りで販売する際の箱も三角形でおしゃれ。

 

024 とらや 白水無月


言わずと知れたとらや。でも意外と東京の人は、もともとは京都のお店だと知らないとらや。京都の人はいまだに京都の店だと思っているとらや。真上から見ると小ぶりだが、ういろうの厚みは25mmと今回のトップタイ。一分の狂いもなさそうな、ピシーッとした三角形の上に、ふっくらとした小豆がみっしり敷き詰められている。モチモチ感が強く、飲み込むまでのもぐもぐタイムがまぁまぁ必要。

 

025 とらや 水無月



白水無月のういろうと少し食感が違う。小麦の団子っぽさが強いというか、密度が高い気がする。原材料を確認すると、白水無月には入っている新粉がこちらには入っていないようだ。白下糖・中双糖・砂糖とカラメル色素が使われており、上品かつ奥行きのある甘みが小豆の風味を引き立てている。通常、定番の水無月は白色という店が多い中、こちらの色付きが「水無月」で、白い方が「白水無月」という名前なのが驚き。まだまだ白砂糖が高価な輸入品だった享保11(1726)年に初出の記録が残るとらやならではのネーミングかもしれない。

 

026 笹屋伊織 黒糖



今から300年以上前に、伊勢の城下町から京都に呼び寄せられて以来、御所や弘法大師ゆかりの東寺をはじめとする神社仏閣、茶道家元の御用を務めてきた老舗。第一印象は小豆の層の厚み。ういろうは切り口の見た目からしてやわらかいことが伝わってくるが、想像以上にやわらかかった。

 

027 笹屋伊織 白



チラシに偽りなし!の小豆のぎっしり具合。ややベージュがかったういろうは、唇だけで噛み切れるほど低反発なやわらかさ。小豆の皮も口に残らないので、マジで歯がなくてもいけるんじゃないかという気がする。

 

028 鶴屋吉信



西陣に店を構える、享和3(1803)年創業の老舗で、柚餅や京観世といった銘菓でおなじみ。上菓子屋の中では比較的やわらかめのういろうは、ほんのりと塩気が感じられる。ふっくらしっとりとした大粒の小豆は、丹波大納言の中でも特に希少な京都亀岡丹波地方の馬路産小豆を使用している。

 

029 老松 白



京都最古の花街・上七軒にて、朝廷に献上する有職菓子や茶席菓子を手がけてきた有職菓子御調進所。25mmと厚みトップタイの白ういろうは、弾力もありながら、歯切れも良く、さっぱりした食べ心地。小豆は粒が大きくツヤツヤと美しい丹波大納言の鹿の子で、しっとりやわらかめ。真上からの見た目はやや小ぶりだが、トータルの厚みは35mmとトップ。

 

030 老松 黒糖



黒糖のミネラル感はあるものの風味はあっさり。色も淡い。味違いというより、色違いくらいのさりげなさ。白に比べると小豆がほっくりしている印象。

 

031 紫野源水


これぞ氷!なビジュアルの本葛製水無月は北大路の名店、紫野源水のもの。なんとも涼やかな見た目。粒感の残る小豆はびっしりと敷き詰めるのではなく、まばらに散らしてあるため、上からも光が入って透明感が際立つ。葛の部分は今どきのかき氷のような粒子感で、ちょっと冷やしたら本当に削った氷のような口溶けになりそう。葛の風味も濃厚。

 

032 笹屋昌園 白



龍安寺のほど近くにあるわらび餅が人気の京菓子店。小豆の色は明るめで、ういろうにはプリッとした弾力とツヤがある。表面は小豆の凹凸が残る程度にコーティングされており、断面もピシッとしている。

 

033 笹屋昌園 黒糖



丹波大納言小豆の粒感とハリ感がすごい。ういろう部分は小麦粉ベースの生地のようだが、粘りや口溶けとは無縁のぷりぷりとした食感が印象的。なお、こちらの店も端を切り落としていないことがわかる。

 

034 笹屋昌園 抹茶



抹茶の風味はそこまで強くないのではと思ったが、白に比べると小豆の甘さが控えめに感じたので、実は抹茶がきいているのかもしれない。ういろうがかまぼこ級にぷりぷりで、口の中に甘さが溶けて広がらないからか、総じて甘さは控えめな印象。

 

035 俵屋吉富 白



京都御所のほど近くに本社工場を構え、豊富で良質な地下水と吟味を重ねた材料で手づくりの味を守る老舗の水無月は、コーティング感のないすっぴん美人系小豆に、ほんのり塩気を感じるやわらかめのういろうのコンビネーション。全体的に甘さは抑えめで、あっさりと上品なのに1個で満足感がある仕上がりは、菓子にあわせて15種類以上の砂糖を使い分けているといわれる同店ならでは。

 

036 俵屋吉富 黒糖



今回の黒糖カテゴリの中ではかなり黒糖の風味が強めのタイプ。ミネラル感やコクがしっかりあって、白黒のコントラストがはっきりしている。これも端は落としていない。ひょっとして、端を落とさないお店の方が多いのだろうか。

 

037 鳴海餅 白



季節の餅菓子やお赤飯といえばここ、という京都人のソウルフード的な店。餅屋らしいモチモチと高反発な食感のういろうが印象的。米粉や餅粉は入っていない小麦粉ベースのういろう生地でこの弾力とは! 一目で分かる小豆の粒の多さと厚み。お求めやすい価格で、京都人のスタンダードのひとつと言われるのも納得。

 

038 鳴海餅 抹茶



白の水無月同様、これでもかと敷き詰められた甘納豆のぎっしり感。ういろうは白よりやや厚みが薄めなので抹茶の主張がそこまで強くなく、小豆の風味が楽しめる。

 

039 鳴海餅 黒糖



濃いめの色ながら、そこまでこってりとした黒糖味ではなく、あっさりと食べられる。ういろうに若干の塩気があるように感じたが、原材料に塩は記載されていないので、黒糖のミネラル感からそのように感じたのかも。

 

040 たねや



お菓子を扱う前は穀物や根菜の種を売る商いをしていたことからその名で親しまれてきた、近江八幡に旗艦店を持つ和菓子店。たねやのあんこは北海道産が多い印象だが、水無月に使われているのは丹波大納言を3回に分けて蜜漬けしたもの。米粉ベースに葛を加えたういろう生地はほんのり透明感のある白で瑞々しい口当たり。

 

041 仙太郎 白



本店は四条寺町を少し下がったところにあるが、それ以上に6月30日の京都のデパ地下で、行列が途切れることがないのではと思われるのが仙太郎。もしはじめて水無月を食べるという人がいたら、まずは仙太郎の水無月から食べてみることをおすすめしたいくらい、全方向にハマるバランス型。しっかりめにコーティングされた小豆部分はファーストコンタクトは甘さを感じるものの、後からしっかりと豆の香りがやってくる。

 

042 仙太郎 黒糖


匠の技で積まれた石垣のごとく、みっしりと隙間なく小豆が敷き詰められている。小豆の香りが黒糖にも負けず一拍遅れてブワーッとやってくる。ういろうはモチモチしつつ、やわらか過ぎず、硬過ぎず。

 

043 仙太郎 抹茶



明るめの緑色が美しい。水無月以外にも抹茶を使った商品をたくさん手がけているため、安定感が半端ない。抹茶の風味が弱いわけではないが、やはり小豆の風味と香りがあとを引く。

 

044 末富



格別に美しい包み紙の意匠が「末富ブルー」として愛されるなど、視覚からの愉しみにも心を配る京菓子司。なんとも涼しげな見た目の葛製の水無月は、ほろりほろりと氷が割れるような口溶けと葛特有の香りが楽しめる。これが44品目でなければ、ひとりで2、3個はペロリといけそう。

今なら「きき水無月」だってできそうだ

2日間にわたる水無月耐久マラソンもこれにて終了。
今回食べた44種はどれひとつとして同じものはなく、それぞれ個性にあふれていた。健康で過ごせることにありがたみを感じ、そう願う人が、今まで以上に増えている昨今。今回の食べ比べを通じて、京都以外の人にもこの水無月の魅力が伝わればと思う。そもそも、誰もが簡単に氷を手に入れられる時代になっても、今なおニセモノの氷が愛され、食べ続けられているなんて面白い。「水無月」の由来は「みな、好き」だからだと、まことしやかに伝えたら、数百年後の人がうっかり信じてくれたりはしないだろうか。

 

 

【ポmagazine編集部より】
当メディアでは、通常の記事掲載においては掲載先への承諾(事前チェック)を経て記事を掲載しております。しかし、本記事においては「食べ比べ」という編集方針を企画の軸にしており、情報の独立性や中立性を重視し、あえて掲載店舗への確認をおこなわずに公開しております。掲載情報や内容の誤り・真偽については注意深く確認をおこなっておりますが、万が一、間違い等がございましたら訂正に応じたいと考えております。(問い合わせ先:contact@potel.jp

※ 商品や料金などの掲載内容は、2021年6月に調査したデータになります。

 

企画編集:光川貴浩、河井冬穂、早志祐美(合同会社バンクトゥ)
企画協力:市野亜由美、ダイモンナオ

 

✳︎『噂で始まる京都観光 ポmagazine』の更新は、こちらのInstagramアカウントのストーリーズでチェック!