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噂な旅通信

「sour」と「ソリレス」のオーナーが、もうすぐ「立ち食い蕎麦」の店をはじめるらしい

「ポmagazine」編集部
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噂の広まり

井戸端会議

京都のプロや旅のプロにお話を聞くシリーズ「あの人からの噂通信」。今回登場していただくのは、「sour」や「炭火焼く鳥 ソリレス(以下、ソリレス)」のオーナー・鈴木弘二さんです。

「sour」はフルーツサワーブームの火付け役となったサワー専門店。「ソリレス」は、自分で焼くスタイルが人気を集める、ニュータイプの焼き鳥屋。いずれもオープンしてすぐに感度の高い人たちのあいだで話題になったお店です。さらにはファッションブランドとのコラボや国内外でのポップアップショップの展開など、カルチャーシーンにおいても、いち飲食店の枠を超えた存在感を発揮しています。

2010年代の京都の飲食シーンをリードし続けてきた鈴木さん。「次に仕掛けたいことは?」と聞くと、「実はもうすぐ『立ち食い蕎麦』の店をオープンする予定です」と、初出のビッグニュースが。少し意外な印象を受けましたが、仕掛け人が仕掛け人。当然、普通の立ち食い蕎麦ではないようです。

鈴木弘二(すずき・こうじ)
大阪でのバーテンダー経験を経て、京都でカフェを5〜6店舗経営したのち、2014年には「炭火焼く鳥 ソリレス」を清水五条にオープン。2016年オープンの京都裏寺町のサワー専門店「sour」は、フレッシュフルーツをふんだんに使ったフォトジェニックなサワーで話題を集める。近年では祇園のギャラリービル「y gion」の「サワーガーデン」や、銀閣寺近くのセレクトショップ「銀鶴堂」に併設する「銀鶴堂 eatery」の立ち上げも手がけた。お母さんは祇園の名スナック「すずね」のママ。

「炭火焼く鳥 ソリレス」Instagram:@sotlylaisse2014
「sour」Instagram:@sour.jp

Q1 「ソリレス」や「sour」など、鈴木さんがオーナーを務めるお店は独自のコンセプトで話題を集めています。これらのお店で共通して大切にしていることはありますか?

まずは「おいしい」こと。これは当たり前すぎますね(笑)。

それ以外で「ソリレス」や「sour」に共通していることは「ギャップ」ではないでしょうか。「ソリレス」であれば、焼き鳥屋なのに自分で焼く、とか。焼き鳥屋なのにワインがある、焼き鳥屋なのにかっこいい音楽が流れている……などなど、店のあちこちに「〇〇なのに」という要素を散りばめています。

「sour」については、チューハイ(サワー)のお店を若い人に向けてやるということ自体、ギャップになっているのかなと思います。今でこそ、ありがたいことに、若い人に普通に飲まれていますが、「sour」がオープンした当時はそうではなかった。チューハイといえば、5、6年前まではサラリーマンが金曜日に電車で飲んだり、おっちゃんが立ち飲み屋で飲んだりしているイメージが強かったんです。僕は元々そういうノリが好きだったから、おっちゃんが立ち飲み屋で飲むようなスタイルをもっと若い子に落とし込めたらおもしろいなと思って、それで生まれたのが「sour」なんです。

Q2 そのようなギャップは計算してつくっているのでしょうか?

これは難しいですね……。ネタばらしのようで少し恥ずかしいんですが、「そのギャップがあることで、お客さんがどんな時間を過ごせるのか?」という点については、すごく考えています。

ギャップってそのまま会話につながるんですよ。たとえばデートの場面、運ばれてきた料理とお相手のことだけでは会話のネタがなくなってしまうことが多い。そこで普通とは違うモノやコトがあると間がもつというか(笑)。地鶏を焼いたり、フルーツ山盛りのサワーだったり、それだけではないたくさんの仕掛けを詰め込んでいます。詳しくは実際に来店していただいてからのお楽しみですが、「ソリレス」と「sour」は、どこを切り取っても話のネタになるような店になっているはずです。

Q3 お店全体が、お客さんのデートやお友達とのお出かけを盛り上げるための舞台装置のようになっているんですね。それらのアイデア自体、戦略的に生み出されたものなのでしょうか?

それはまったく違いますね。「ソリレス」も「sour」も、まず自分たちが「これおもしろいんちゃう?」と思ったことがアイデアの出発点になっています。

「オシャレだね」と言っていただくことは多いんですが、僕自身は「オシャレと言われる店をつくろう」と思ってはじめたわけではないんです。どちらかというと「アホやん、おもしろいやん」という感覚。イチゴがぎゅうぎゅうに詰まったサワーなんかも「オシャレなものを」と思ったらあんな風にはしなかったと思います。実際、イチゴをグラスにバーっと入れて「これでいいんちゃう?」って言ったら、スタッフ全員、「ダメです。そんなん無茶苦茶じゃないですか」って(笑)。

Q4 それは「ひらめき」ともまた違うものなのでしょうか?

「ひらめき」がゼロから突然生まれる考えという意味であれば、ひらめきではないと思っています。誰でもそうやと思うんですけど、そういう意味でひらめくことってほぼありえないんじゃないでしょうか。

普段から好きで見たり考えたりしていることを自分の店に落とし込むことが多いですね。ファッションや音楽、建築。あとはそれこそ飲食店とか。

「sour」では、カウンターの真ん中に植木をドーンと立てています。これは大阪の立ち飲み屋さんでの経験から生まれたアイデアです。

立ち飲み屋さんに行ったのはオープンの1週間ほど前ですね。でっかいテーブルにお客さんがひしめき合って飲むようなお店でした。そこで酔っ払った他のグループの声とかが聞こえすぎるのがちょっと気になったんですよね。そういうお店に行っておいて贅沢なんですけど、「ちょっとプライベート感もほしいな」と。

元々、「sour」にも大きなカウンターをひとつ置こうとは思っていたんです。そこで一種のグルーヴ感が出るといいなと考えていたんですけど……。この立ち飲み屋さんでの経験があって、「出会いとかが生まれてもいいなと思っていたけど、それが嫌なお客さんもいるんだよな」ということに気がついて。もう内装も出来上がっているし、オープン日も近いしでとても悩みましたね。そこで出てきたのが大きな植物を置くアイデア。ワイワイ飲んでる感もありつつ、一緒に来た人たちとの世界も守られる。簡単には繋がれないけど、無理したら繋がれる。ちょうどいい距離感が生まれる空間にしようと思って置いています。

Q4 飲食店に対してアンテナを高く張っていると思うのですが、そんな鈴木さんがよく行くお店を教えてください。

よく飲みにいくのは四条の四富会館に入っている「日常」です。仲がいいので、一緒にイベントをすることも。最近だと二条城近くの「乍旨司(さしす)」にスタッフをよく連れていきますね。

「日常」Instagram:@nichizyooo
「乍旨司」Instagram:@maki_sasisu

Q5 今後、京都で仕掛けていきたいことはありますか?

ニュースとしてはまだどこにも出していないんですが、実は今、新しい店の開店準備中なんです。場所は「ソリレス」の近く。年内、または年明けでのオープンを目指しています。立ち食い蕎麦の店なんですが、普通の蕎麦屋さんとはちょっと違う店、「ソリレス」「sour」同様、「〇〇なのに」の精神が詰まった店になる予定です。

立ち食い蕎麦というと若い人、とくに女性は行く機会が少ないんじゃないかと思います。年齢層が高いお店だと他のお客さんに遠慮する気持ちがあったり。一方で、蕎麦の可能性ってすごくあると僕は思っていて。お腹が満たされるのはもちろんですが、海外ではスーパーフードと言われていたり。立ち食いならではのクイックさも好きなんですよね。「sour」で酎ハイを若い人たちに飲んでもらっているように、立ち食い蕎麦についても、ちょっと新しいスタイルでその魅力を伝えれたらなと。立ち食いなのに自家製麺だったりと、味にももちろんこだわります。どんなお店になっているのか、ぜひオープン後に確かめに来てください。

あともうひとつ、神戸の飲料メーカーさんと一緒に「sour」の缶チューハイを作っていて。味も缶もできてるんですが、どこで売るかがまだ決まっていないんです。京都なら、宿泊施設に置きたいなって思いますね。実現した時には、京都旅行のお土産に持って帰ってもらえたらうれしいです。

企画編集:光川貴浩、河井冬穂(合同会社バンクトゥ)
写真提供:鈴木弘二