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アート好きも、そうでない人も「誰一人取り残さない」。秋の京都は、誰もが楽しめるアートのおもてなしが超充実しているらしい

沢田眉香子
編集・著述業

噂の広まり

独り言

秋は京都のアートの旬!アートを避けて、街は歩けない

もとより京都はアートファンを魅了する街だが、そうでない旅人にも、秋の京都はアートへの垣根をグッと下げてくる。ガチなコレクター向けのアートフェアから、カフェでお茶ついでに楽しめる街なかの展示イベントまで、「誰一人取り残さない」アートのおもてなしが待っているという。

秋のアート巡りにぜひ活用したいのが、京都府と京都市が連携し、アート関連イベントを一体的に発信する「京都アート月間」の公式Webサイト。京都で10-11月開催のアートイベント情報を一挙に検索できる。アートフェア会場間のシャトルバスの運行情報もあって、超便利

◾️「コラボ」スタイルが世界的にもユニーク!「Art Collaboration Kyoto」

日本美術や伝統工芸のイメージが強かった京都だが、5年前に登場した現代アートフェア「ACK :Art Collaboration Kyoto(アートコラボレーションキョウト)」は、国内外のアートコレクターに「現代アートのマーケット・京都」のイメージを焼き付けた。

アートフェアとは、多数のギャラリーがブースを構えてイチオシの作品を展示販売する見本市だが、ACKは世界各地のどのフェアにもない個性がある。それは、国内の現代アートギャラリーが海外ギャラリーとタッグを組んで出展する「コラボ」スタイルであること。好みのギャラリーが選んだ海外ギャラリーを見られることは、コレクターにとっておもしろみが倍増する。

会場全体が開放的に構成されており、ブースからブースへ、迷うように回れるのもおもしろい(Courtesy of ACK, photo by Moriya Yuki)

ブース以外にも見どころは多い。まずは会場である国立京都国際会館の、シビれる建築美。

国立京都国際会館は、丹下健三に師事した大谷幸夫設計のモダニズム建築の傑作。建築を見るためだけでも会場へ足を運ぶ価値あり(国立京都国際会館提供)

そして、会場での特別展示、アート通になれるトークやシンポジウム。
フードコートには地元で人気のフードが並ぶのも気が利いている。

フードコートには、ケパサ(タコス)、そのば(だし巻きサンド他)、汽 [ki:](ファラフェルラップサンド)、木村喜商店(カレー)、ルース キョウト(ドーナツ)など、京都で注目を集めるお店が一堂に。写真は2024年の開催風景(Courtesy of ACK, photo by Nakatani Toshiaki)

さらに、市内随所で同時期に開催される連携プログラムは、お寺での展示や地元のアート関係者が出入りするエッジなギャラリーも多い。これは京都ツウにとっても刺激的。
ACKのプログラムを周遊すれば、最旬京都カルチャーツアーができてしまうのだ。

ACK :アートコラボレーション京都

2025年11月14日(金)〜16日(日) 国立京都国際会館
https://a-c-k.jp/

◾️名勝とアートのいいとこ取り。京都らしすぎるアートフェア「CURATION⇄FAIR Kyoto」

京都の秋は、お庭でも眺めながら和の情緒を満喫したい……という向きの心も掴むアートフェアが今年から開催される。
「CURATION⇄FAIR Kyoto(キュレーション・フェア・キョウト)」の会場は、白砂と紅葉が美しい、西陣の大本山 妙顕寺。出展するギャラリーは古美術、工芸、近代洋画が中心のラインナップ。

会場となるのは、西陣の大本山 妙顕寺。世界でもここだけの、和情緒たっぷりなアートフェア
会場には現代工芸のアーティスト作品も。写真は陶芸家・岡安真美の「林檎」(しぶや黒田陶苑)

関連イベントも豊富で、サテライト会場の名勝・渉成園(枳殻邸)では、展覧会「工+藝」京都 2025が開催され、呈茶席や和舟の体験もできるという。
さらに、大原にある温泉宿・大原山荘では花会などの関連イベントも企画され、お庭とアートをめぐるプレミアム感たっぷりなプログラムが開催されるそう。
和の伝統美とアートがグッと近づく、京都ならではのイベントだ。

併催展覧会「工+藝」京都 2025には、気鋭の現代工芸作家の作品も並ぶ。会場の名勝・渉成園(枳殻邸)では、和舟体験や呈茶のプログラムも

CURATION⇄FAIR Kyoto

2025年11月15日(土)〜18日(火) 大本山 妙顕寺
https://curation-fair.com

◾️「気が付いたら、アートを楽しんでいた」
街なか周遊イベント「Art Rhizome KYOTO」

ホテルでくつろぎ、カフェでお茶したら、知らず知らずにアートを楽しんでいた。そんな初心者にやさしい、バリアフリーな鑑賞体験が「Art Rhizome KYOTO(アート リゾーム キョウト)」だ。
街なかの商業施設など10か所に若手アーティストの作品が展示される周遊イベントで、会場と作品との組み合わせがなんともユニーク。

たとえば、京都市役所新庁舎には、雑踏で耳に入ったつぶやきを布に刺繍する小林楓太の作品が揺れている。町家の会場には、彌永ゆり子のちょっとレトロなデジタルメディアの作品。
場所自体も楽しく、アートファンなら、作品のコンセプトと場の絡みを読み解く楽しさもある、なかなか凝った展示なのだ。

京都市役所新庁舎で展示されている小林楓太の作品。耳をすまして聞こえてきた誰かのつぶやきがオーガンジーに刺繍され、その場のノイズのなかで揺れている(Photo by Haruka Oka
宮川町のお茶屋をリノベーションした、コワーキングスペース・サイツキョウトには彌永ゆり子のデジタル作品を展示。1階はクラフトビールが飲めるバー

制作したのは4人の若手キュレーター。そのひとり、現代美術キュレーターの金澤韻(かなざわこだま)さんは「展示会場を公募で選び、今見るべきアーティストをキュレーターみんなでリストアップしました。名が挙がった70名ほどの若手アーティストのなかから、会場の雰囲気と合うか、などを検討して絞り込みました」と、綿密な展示プランを話す。

設営には、ギャラリー展示にはない苦労があったというが、「美術館とかギャラリーでは身構えて見てしまうので、それを最大限取っ払うことができるのが、こうした会場のいいところだと思います」と金澤さん。
リラックスした環境で心ゆくまで楽しめる、初心者でも行きやすいカジュアルなアートイベントだ。気に入った作品は購入もできるそう。

前田珈琲 文博店には、谷澤紗和子の作品。額の中の折り紙の作品には、ジワジワくるパワフルなメッセージが(Photo by Haruka Oka )
三井ガーデンホテル京都三条プレミアに展示される中村夏野の作品。展示のための設備がなく、釘1本打てないというハンディを克服し、見事、石庭とデジタルイメージが融合するインスタレーションが実現した(Photo by Haruka Oka)

Art Rhizome KYOTO

2025年9月13日(土)〜11月18日(火)
https://artrhizome.kyoto/kw25_about

◾️チームラボも降臨。アートな街に変化中の京都駅東部・東南部南東エリアでの周遊イベント「Lightseeing Kyoto South」。
街ネタ好きも、いらっしゃいませ。

京都市立芸術大学が移転し、チームラボが国内最大のミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」をオープンした京都駅東部エリアでは、京都市が文化芸術や若者を軸としたまちづくりを推進している。
着々と新スポットが登場し街ネタ好きの心を騒がせるこの街を、アート鑑賞で周遊できるイベントが「Lightseeing Kyoto South(ライトシーイング・キョウト・サウス)」だ。

Lightseeing Kyoto South作品展示の会場は、生活感が残る市営住宅の空き店舗やカフェ。周遊スポットを歩いてみると、高瀬川沿いがきれいに整備され、芝生のカフェもオープンしていることに気がつく。ここでは京都の街の変化とアートとの関係を考えつつ周遊を楽しんでみてほしい。

「Lightseeing Kyoto South」のhatoba cafeでのグループ展は「光」がテーマ。小松千倫の作品は、LEDを取り付けたコスチュームを着て撮影した映像(photo by Mikoto Yamagami)
市営住宅の空き店舗が、展示会場とインフォメーションセンターに。元喫茶店の会場では、陶芸作品を展示販売

Lightseeing Kyoto South

2025年10月4日(土)〜11月16日(日)期間中の土日祝のみ開催
https://www.instagram.com/lightseeing_kyoto_south/

のべ面積約10,000平方メートルの空間でオープンした「チームラボ バイオヴォルテックス 京都
《質量も形もない彫刻》© チームラボ, courtesy Pace Gallery
エリア内の南岩本公園に、10月19日にオープンした「The paddock cafe」は、広い芝生のある開放的な空間

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